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もぐら」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
とある河川敷が見えるレストランで働く不思議な美人ウェイトレスのお話。

そのウェイトレスは、窓辺の席に一人で座る男性を見つけては、「あなたもぐらね?」と尋ねる。

そう聞かれた男たちは、「いや、もぐらじゃないよ」などとやはり答えるのだが、すると彼女は決まって「そう」と言い立ち去るのだ。


この噂を聞きつけて入店する男性客もいる。
わざと窓辺の席に座り、彼女が例の質問をする。中には、「そうだよ、もぐらだ」と答えてみる者もいる。しかし彼女の返事はいつも大体「そう」とそっけないのだ。


どうも合言葉では無いらしい。

この不思議なウェイトレスは何故こんな質問をするのだろう?
[テトルート]

【ウミガメ】22年01月05日 15:38

気長にお待ちしております(o_ _)o

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(以下は、現在とあるレストランでウェイトレスをしているとある女の独白である)

8年ほど前、私はホームレスだった。10代のころだ。

とある河原が私の住処となった。

夏は屋根のある橋の下、そして冬は…あの地獄のような凍える冬は、陽のさす場所へ。


ダンボールハウスをつくってそこに寝ていた私は、1度男たちに襲われかけた経験から、目深にフードを被りそして極力ダンボールハウスの中に閉じこもることによって、見られないようにしながらホームレス生活を送っていた。


そんな冬のある日、我がダンボールハウスの隣人が出来た。


顔はハッキリ見たことは無いが、私のダンボールハウスより出来が悪かったことを覚えている。


「なぁちょっと横の人、死なねーのか?こんなに寒くてよ」

それが始まりだった。彼との初めての会話。

「…横って、私ですか?」

「うおっ女かよ。寒くねーのかよ」

「寒いですよ、でも良いんですもう」

不思議と、彼には恐怖はなかった。
彼はよき隣人となった。

ある日、彼は嬉しそうに言った。

「おい、こうして寝るとあったけーぞ」

「…何が?」

「いい加減ダンボールから出てこいよダンボール女、見てみろよ」

「嫌、寒いし」

「…そっか、寒いか。今掘った穴に身体埋めて寝てんだ。ダンボールとボロ服で囲ってな。ちょっとはマシだぜ」

彼はこの寝方を「もぐら寝」(もぐらのように穴を掘ることから)と名付け執拗に私に勧めてきた。もちろん丁重にお断りした。


そしてある日、彼が言った。

「俺、行くわ。じゃあな、名も知らぬダンボール女よ。お互い、ホームレス卒業してまた会おうぜ。先に行って待ってるからよ。汚れた顔見たくねーから、今は見ないでおいてやるよ」

何も返せなかった。彼との隣人生活はそれほど、私にとって優しく、かけがえのないものとなっていたからだ。彼は返事も待たず行ってしまった。私は夜どうし泣いた。


8年後、私は窓からかつての住処がよく見えるレストランで働いていた。


今でも彼のことを思い出す。顔も名も知らない大切な元隣人。

私は今日も客に尋ねる。彼がここに来てくれることを信じて。

「あなたもぐら寝?」

「そうだよ、俺もぐら。」

「そう…」

こんな質問を続けるうち、私は不思議ウェイトレスとして面白がられているようだ。でも、あまり興味はない。


今日も、寂しい刻が過ぎていくだけだ。そうして私の一生は終わるのだろう。

客がくる。高そうなスーツに身を包んだ男だ。窓辺の席に座り、優雅に外の景色を眺めている。だから、いまや名物となったこの質問。

「あなたもぐら寝?」

その男は何故かニヤリと笑った。面白がっているのだろうか。彼は私を見てこう言った。

「そう、俺が‘ もぐら寝’だ。久しぶりだなダンボール女」


肌寒い冬。彼の顔がぼやけているのはどうしてだろうか。
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天童 魔子>>コメントなし
きまぐれ夫人>>コメントなし
京介>>コメントなし
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ちくわ[ラテアート]>>コメントなし