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柚香はチョコレートを渡すとき、悲しくなって、透の綺麗な手をぎゅっと握りしめた。
柚香がフラれたわけではないとしたら、いったい何故?
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簡易解説
透は柚香の親友で、毎年彼氏のために手作りチョコを作っていた。この時期になると不器用な彼女の手は火傷や切り傷だらけだった。
しかしそんな彼女が、綺麗な手で、既製品のチョコレートを買いに来ている。
柚香は破局の予感に悲しみを抱いた。
解説
柚香は売り子である。その日はバレンタインの特設会場でレジをしていた。
柚香は驚いた。大好きな友人である透が、チョコレートを買いに来たのだ。しかも製菓用ではなく贈答用の美しいチョコレートをである。
透は毎年、不器用ながらも彼氏のために手作りチョコを作っていたのに。彼女の手はこの時期になると、火傷や切り傷などでボロボロだった。
透に手作りなんてやめてしまえばいいと言った日。
透の手は柚香が施した薬やガーゼが大げさで、痛々しいことには変わりなかった。見ていられなくて、言ったのだ。
でも薄情な透は、親友の想いを無下にして、「彼が喜ぶから」とにっこり笑った。その素敵さといえば、過保護な柚香が口を噤む程であった。
そんな彼女が目元にクマをたたえ、傷1つない綺麗な手で既製品のチョコレートを買いに来ている。
胸が締め付けられる思いだった。透から彼氏との関係が上手くいっていないことは聞いていた。しかし、話を聞いていただけだ。柚香の心のどこかでは、まだ幸せそうな透が彼と寄り添っていた。それが幻想にすぎないことに気付いて、この瞬間柚香はとてつもなく泣きそうになった。
驚きか、慰めか、はたまた確認だったのか柚香自身にもよく分からない。しかし何かせねばならぬと思って、客である透の手をぎゅっと握ってしまった。
彼女は突然店員に手を握られて、驚いたように顔を上げた。そして柚香に気付くと、まだ2人で遊んでいた頃のように、「やあ、久しぶり」と笑った。
物語:11票