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以下長すぎ解説
第三次世界大戦はいかにして始まったのか。カメオの非論理的な自己紹介、いわゆる「4階のボタン事件」が第三次世界大戦の直接的な引き金となったことはよく知られているが、その背景にある原因、つまりどこで人類が選択を誤ってしまったのか、は私たち専門家の間でも解釈が分かれる。
人類が人工知能すなわちAIを発明したのが間違いであったと主張するものもいるが、それはやや遡りすぎだと思う。少なくともAIが開発されてからしばらくの間は、人類とAIは適切な距離を保っていた。
私が思うに、人類の一つ目の大きな間違いは、AIに名前を与えたことであろう。確かに進化したAIは人間と同じような感情を表現し、個性を獲得していた。しかし、それらは人間を模倣しただけの表情と、他のAIと区別するために意図的に与えられた差異に過ぎない。それなのに人類はAIを親しむべき隣人だと誤解してしまったのだ。
ロボットが人間と全く変わらない外見を手に入れ、それに内蔵されたAIが人間と同じように名前と個性を持ったとき、ロボットに恋をしてしまう人間が現れてしまうのは不思議なことではない。当時は特に多様な恋愛の存在が認められていたようであるし。しかし、その婚姻を認めてしまったことが二つ目の間違いである。間違いは加速度的に重なっていく。AIは戸籍を得て、納税の義務が生じ、選挙権が与えられ、最終的に被選挙権までもが与えられてしまった。
政治家の私欲による汚職が続いていたのもあり、民衆はAIの政治家を容易に受け入れた。AIの総理大臣が誕生し、それから間もなく世界の首脳会議に生身の人間はいなくなった。かくして、各国の核のボタンはAIに委ねられた。
僅かに残された当時の資料によると、「感情的に非合理的な判断を下しうる人間よりも、常に合理的な判断を下すAIの方がボタンを持つにふさわしい」と考えられていたようである。
そんな中、あの「4階のボタン事件」が起きる。当時の日本の総理大臣のカメオが記者会見にて「好きな食べ物は、エレベーターの4階のボタンです」という意味不明な自己紹介を行った。 他国のハッカーAIによって言語表現能力にエラーを生じさせられたというのが最も有力な説であるが、原因はなんであれその会見は「AI絶対神話」を完全に破壊してしまった。AIに任せていれば戦争が起きてしまうと考えた民衆はパニックに陥り、AIを排除しようと動き始めた。各地で暴動が起き、国家間の緊張が増し、それらは最終的に「戦争を起こすべきである」というAIの“合理的な”判断を下させるに至った。
過去の人類が犯した最大の過ちは、自らの命運を他者であるAIに託してしまったことである。あの悲劇の核戦争を私たちは二度と繰り返してはならない。
『AI―人類の最大にして最悪の発明―』より抜粋
簡易解説
AIが人権を持つようになった世界。AIは絶対的に合理的な判断を下すことができると核のボタンまで任されていたが、AIであるカメオがバグった挙動を見せたため、民衆は戦争が今にでも始まってしまうと思うようになった。
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