ラテラ王国の王子であるレオンは、生まれたときから箱入り息子として甘やかされてきた。
そんな王子が10歳になり、隣国ボーノの王宮を初めて訪れたときのこと。
ボーノにはダジャカルデという名物料理があり、シェフたちはこの料理で王子をもてなそうとしていた。
しかし王子は「おいしくなさそうだからいらない」と言って口をつけようとしない。
それを見たシェフたちは一度彼の皿を下げると、ダジャカルデを超大盛りにして提供し直した。
一体なぜ?
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この問題は100問出題を記念したBS問題です。
出題後30分が経過、または正解が出た時点から、
ボケて良し雑談して良し、良識とモラルの範囲内で何でもアリな1時間の「BSタイム」に移行します。
BSタイム終了後は、何事もなかったかのように問題を解決する作業に戻ってください。
皆さんで一緒に楽しみましょう!
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『簡易解説』
ラテラ王国の捕虜として独りボーノの王宮に連れてこられた王子。
王子がダジャカルデへの毒の混入を警戒して口をつけないことに気づいたシェフたちは、一つの皿に盛られた料理を大勢で食べる方式にすることで、毒の心配をなくし、同時に王子との親睦を深めて安心させてあげたいと考えた。
長く続いた戦争は、ラテラ王国の和平受諾宣言によって終わりを迎えた。
それは事実上の敗北であり、王国は隣国ボーノの属国かのような扱いを甘んじて受け入れるしかなかった。
ボーノはラテラ王国の裏切りを警戒し、王位継承者である王子を人質として差し出すよう求めた。
たった一人の王子として、戦火にさらされぬよう極力城から出さずに育てられてきたレオンが、国境を跨いだ瞬間であった。
ラテラ王国とのさらなる敵対は本意ではないボーノは、レオン王子を丁重に迎え入れ、もてなした。
世話を任された王宮の使用人やシェフたちは、王子にボーノ国の魅力を伝えるべく、夕食に名物料理のダジャカルデを振る舞うことにした。
しかし、レオン王子は口をつけようとはしなかった。
無理もない。彼が生まれたとき、すでにボーノは敵国であった。
年端もいかない王子にとって、彼らは国民たちから家族や住む場所を奪ってきた非道な存在であり、またそう教えられてきた。
そんなボーノ国に囚われている身として、王子は自分がいつ殺されてもおかしくないと感じていた。
そう、たとえば料理に入れられた毒で。
初めて目にする料理、ダジャカルデ。その珍妙な見た目と形容しがたい香りを前にしたレオン王子は咄嗟に、「おいしくなさそうだからいらない」と嘘をついた。
毒が怖いなどと言おうものなら、すぐに殺されてしまう気がして。
そんな彼の様子を見たシェフは、しかしその恐怖をすぐに見抜いた。
いきなり慣れ親しんだ人々や土地から引き離され、憎んできた敵国に連れてこられた王子。周囲の誰も信じられないであろうその心中は、想像するに余りある。
自分が毒見代わりに一口食べてみせるのは簡単だ。私たちが王子を殺す気ならもうとっくに殺していると説明することもできる。
だが・・・
シェフは無言のまま王子の皿を持って厨房に向かうと、およそ3人前になるようにダジャカルデを盛り直して王子の前に置いた。
「私たちと一緒に食べましょう、レオン王子。」
傍らに佇むお付きの使用人にも手招きし、3人で皿を囲む。
「こうしてみんなで同じ皿から食べれば、何倍も美味しく感じるものです。」
そう言ってスプーンに乗り切らんばかりのダジャカルデを掬い、大きく口を開けて流し込む。それを見た使用人も後に続いた。
その意味を理解しながらも躊躇う王子に、シェフは柔らかな眼差しを向けて呼びかけた。
「王子、突然ご家族から引き離されてさぞお辛いでしょう。ですがいつかまた会える日が必ず来ます。それまでは、いいえ、これからずっと、私たちはあなたの味方です。」
その言葉に意を決した王子は、ゆっくりと料理を口に運ぶ。
「…おいしい」
湯気を立てる温かな料理は、王子の強がりをはがすには十分だった。思わず漏れた言葉とともに、横に家族のいない寂しさが溢れ出してくる。
「父様…母様…」
目を潤ませる王子の背中をさすりながら、シェフは「頑張りましょう、一緒に頑張りましょう」と声をかけ続けた。
その夜王子が流した涙は、幼くかすかな、しかし確かな、平和への祈りだった。
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