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ナナミのことを「ママ」と呼んでいた息子•ヨウタに、初めて「おかあさん」と呼ばれたとき。
ナナミがヨウタに、ママと呼んで欲しい気持ちを我慢して「ママでもお母さんでもない別の呼び方」で自分のことを呼ぶように言おうと決めたのは、一体何故か?[編集済]
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息子は言葉の覚えが比較的早い子だった。
『マ〜マ!』
ぷくぷくとした唇が私に向かって何度もぱくぱくと動いて、初めての言葉はやっぱりママだったねなんて夫と笑いあったのが、息子が1歳になる少し前のこと。
私の両親が良くない筋からの借金を残したまま事故で死んで、どうやらその返済名義が一人娘の私になっているらしいと発覚したのが、息子が1歳になった少し後。
恫喝まがいの取り立てから家族を守りたくて、夫に息子を託す形で離婚したのが同じ頃。
昼も夜も働き通しだった毎日。
やっと完済の目処が立って、学生の頃からの夢だった小学校の先生へと転職したのが去年。
◆ ◆ ◆
そして今年。
何の運命のいたずらなのかーーーーなんと息子が、私の学校に入学してきた。
驚いた。間違っても息子達に取り立ての矛先が向かないようにと、別れてから一切連絡を取らないようにしていたから。
…………どうしよう。声をかけてもいいものなのかしら。でも、なんて声をかけたらいいの。
『ママのこと覚えてる?』『もし叶うなら、もう一度ママと呼んで欲しい』って。そんな風に思ってしまうのは……やっぱりわがままかしら。
悶々と悩み続けて数週間。
「おかあさん」
不意に、息子にそう呼ばれた。
……心臓が止まるかと思った。愛しさで目が潤みそうになったけど……息子がすぐにハッとした顔になって、それから恥ずかしそうにおろおろとし始めたのを見て、気がつく。
そういえば、この子は私を『ママ』と呼んでいたのに、さっきの『おかあさん』は随分と慣れた言い方だった。
そっか…………。
あなたにはきっと、もう私とは別の『おかあさん』がいるのね。それなら、『ママ』って呼んで欲しいなんて私のわがままで、あなたを困らせるわけにはいかないわ。
「こら、洋太くん。私はあなたのママでもお母さんでもありませんよ? ちゃんと七海先生って呼んでくださいね?」
「はぁい! ごめんなさぁいななみせんせい!」
寂しいけど、あなたが今幸せなら、
『ママ』とっても嬉しいわ!
◾️簡易解説◾️
息子が物心つく前に離婚した、小学校教師をしてい七海。
数年ぶりに再会した息子が、『せんせい』を呼ぶつもりで間違えて『おかあさん』と呼んできた。それはむまり、息子は咄嗟に呼び間違いをするくらい、普段から『おかあさん』という言葉を口にし慣れており、今は七海とは別の『おかあさん』と暮らしているということだと思ったので、七海は自分が『ママ』だと明かすことをやめて、あくまでも教師として息子と接することにした。
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物語部門
霜ばしら>>
我慢した時の気持ちを思うととても切ないです…