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「初めて会った日のことを思い出すなぁ…」
最愛の夫・壮太との思い出のアルバムを眺めながら、ひとり呟く瑞希。
薄暗い部屋の中で自らの死を悟った瑞希は、震える手で遺書を残すことに決めた。
さて、この遺書の右上にある単語は何か?
シチュエーションを踏まえて答えて欲しい。
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解説
今振り返ってみても、特に準備不足だったとは思わない。
危険性は充分承知していたし、学生のときに嫌というほど使ったルートでもあった。
・・・・・・・・・・・
…それでも、「山の天気は変わりやすい」ということを身を持って体感するのは初めてだった。
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───夫・壮太の突然の出張。
家事の全般を請け負っている瑞希にとって、これは予期せぬ余暇の到来に他ならない。
大学生のときの趣味であった登山に思い至ったのも、単にこの余暇を充実させたいと思ったが故の思考だった。
しかし常々、人の都合を大自然は関知しない。
瑞希が山を登りはじめてから十数時間。
突如降り始めた大雪は、あっという間に視界と道標を奪い去っていた。
命からがら無人の山小屋にたどり着いた瑞希は、震えながら救助を待つことにした。
「寒い…」
建物の中とはいえ、所詮は簡素な造りの小屋である。直接の冷風は凌げても、纏わりつくような冷気はどうしようもなかった。
日帰りで下山するつもりだったため、荷物の中には少量の水と栄養食しかない。
加えてこの気温。防寒具は所持しているが、夜を明かす想定はしていなかった。
夜明けまで持つかどうかも、怪しい。
一縷の望みは携帯で救助を呼ぶことだが、孤立した山の自然に悪天候、何度試しても電波は通じなかった。
既に日は落ちかけ、辺りは闇に包まれつつある。
刻一刻と激しさを増し、本格的に吹雪いてきた外の様子を認めた瑞希は、いよいよ生きる希望を失いつつあった。
───徐に、携帯の写真のアルバムを開く。
そこに写る最愛の夫との楽しい思い出を、ゆっくりと懐古する瑞希。
「初めて会った日のことを思い出すなぁ…」
…そうだった、壮太と出会ったのも雪の降る寒い日だったな。まだ付き合ってもいなかったけど、薄着の私を心配して上着を貸してくれたっけ。
あの時は恥ずかしくって、ちゃんとお礼も言えなかったんだよなぁ…。
都合のいい脳ミソだと思う。今際になって堰を切ったよつに心残りが溢れてくるのだから。
「メモ帳…メールの下書きの方がいいのかな。」
携帯のメール機能を開いた瑞希は、新規のメールリストに、下書きで遺書をしたため始めた。
寒さで手が震えて、上手く打ち込めない。
───ご飯はちゃんと食べてね。油ものばかりじゃダメだよ。寝るときはちゃんと暖かくすること。靴下はちゃんと表にしてから洗濯に出してね。読んだ本は床に積みっぱなしにしない。あと…
(あはは…遺書に小言書いてるよ私…)
(先立つ不幸を…みたいなの書いた方が良いかな…いや、堅いよな…)
(あ、クリスマスケーキ予約してた…一人だと多いよね…ごめんね…)
(そういえば壮太のスーツ…クリーニングに出してたな…)
(あー…今度一緒に観に行くはずだった映画のラスト…教えに来てくれるとうれしいかも………)
(一緒にいてくれて、ありがとう…本当に………)
(あと、あと……そうだ……あのときの………上着の……お礼…………)
(………………ちょっと、眠いなぁ………)
(………………………………)
A、圏外
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トリック部門
ぺてー>>
遺書の右上になんかあったかな?と考えてしまいました
「アルバム」がいい味を出しています