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夜、浮気性のジョンが寝室で枕を濡らしていたのは、あることへの恐怖からである。
状況を補完した上で、あることの詳細を答えて欲しい。
※あることとは「妻に浮気がバレること」や「離婚を言い渡されること」ではありません。
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A、窒息死すること
ジョンの様子がおかしいのは、なんとなく気付いていたの。
帰りが遅い日が続いたり、突然の出張が増えたり。
当然、彼を疑いたくはなかった。
でも、夕食の際にトイレに行った隙に、つい彼の携帯を見てしまった。
知らない女とのツーショット。知らない女とのやり取り。知らない女に向けた、愛の言葉まで。
しかも一人じゃない。複数人と似たようなやり取りをしてた。
ずっと前からよ。ここ一年や二年に限った話じゃなかった。
後頭部を殴られたような衝撃だったわ。
勝手に見たのは悪いと思ったけど、平静を保つなんて出来なかった。
戻ってきた彼に写真を突きつけて、問い詰めたの。
そしたら彼、開き直った様子で、「君にも原因がある」って言ったのよ。
いつも家事で忙しそうにしていて、家にいても安らげないし、ちっとも気を使ってくれなかったって。
私が悪いんだって。
許せなかった。浮気をしておいて、問い詰められても開き直って、厚かましくも他人のせいにする態度が。
もうこの人とは、やっていけないと思った。
好きなところは沢山あった。でももう無理だった。
たった一回の裏切りだけど、どうしようもない侮辱でしかなかった。
だから言った、離婚しようって。
でも彼、全然まともに受け取ってくれなかった。
本気だって言っても、「エマ、君は冷静じゃないね。だから勝手に人の携帯を見たりするんだ。明日になれば落ち着いて話もできるだろう。」って。
そう言って、一人で寝室に行ってしまったの。
その後は、よく覚えてない。
暫く一人で色々なことを逡巡して、気付けば1時間くらい経ってたと思う。
自分でも何を考えてるか解らなかったけど、そのままふらふらと彼の寝てる寝室に向かったの。
起こさないようにそっと扉を開けて中に入ると、ぐっすりと眠ってる彼がいたわ。
今日のことなんて、何もショックを受けてないみたいだった。
その時、強烈に彼のことが憎くなった。
絶対に許せなかった。絶対に。
隣にあった私の枕を手にとって、仰向けで寝ている彼の顔に押し付けたの。
当然彼は暴れたわ。でも、全体重をかけて必死に押さえ込んだ。凄く長い間そうしていたと思う。実際は、もっとずっと短い時間だったんだろうけど。
いっとう身体が跳ねたと思ったら、そのうち彼は動かなくなった。
恐る恐る枕をどかすと、彼の顔と枕は涙で濡れていた。
泣いていたのよ。彼。
息ができない苦しさと、死ぬことへの恐怖で。
でもそれを見て、「咄嗟に枕にしてよかった」って思ったの。
殺すときに泣いている彼の顔を見たら、正気に戻ってしまいそうだったから。
私はそのまま、気絶するようにソファで眠った。それで朝になって、冷静になってここに来たの。
別に後悔は無いわ。
でも…そうね。ジョンの言う通りだった。
一晩経てば、落ち着いて話せてしまえるものね、刑事さん。
トリック:7票物語:8票良質:3票
トリック部門
ぺてー>>
「枕を濡らす」というしんみりとした表現が、我々を真相から遠ざけてきます