最近スランプ気味の文芸部員のカメオ。
ある日、魔が差して部活仲間のウミオのアイデア帳を盗み見てしまった。
(このアイデア、めちゃくちゃ面白いじゃないか…!なんでウミオはこれを小説にしていないんだ?)
そう思ったカメオは、そのアイデアをもとにした小説を書き上げると、自信満々に部活仲間に発表した。
みんなの反応は上々だったが、特にウミオがその小説を大絶賛したのはなぜ?
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《簡易解説》
ウミオのアイデア帳に書かれていたのはカメオがかつてウミオに話したもので、ウミオも気に入ったため、カメオのアイデアとしてメモを残していた。
カメオは忘れていた自分のアイデアを思い出して自信作として書き上げ、ウミオは前々からこのアイデアが小説になることを待ち望んでいたため、大絶賛をした。
《解説》
(はあ、何にも小説のアイデアが浮かばない…)
部室に来たはいいものの、スランプで苦しんでいたカメオは、一冊のノートを見つけた。
(ん? あれはウミオのアイデア帳か? アイツ最近調子いいしな… ちょっとだけ見てもバレないだろう)
そうして魔が差して、ウミオのアイデア帳をめくり始めると、そこには様々なことが書かれていた。
小説の設定やあらすじ、小説や広告の気になったフレーズ、中には小説や漫画への感想文のようなものまであった。
(やっぱりすごい奴は普段からすごいんだな… それに比べて俺は…)
落ち込みながらめくった次のページに書かれていたのは、ウミオにしてはめずらしいSFもののあらすじのようだった。
どこかウミオらしくないそれは、しかしカメオの心を捕らえて離さない。
(このアイデア、めちゃくちゃ面白いじゃないか…!なんでウミオはこれを小説にしていないんだ?)
浮かんだ疑問も束の間、答えはすぐに分かった。
───○月×日 カメオが話してくれたあらすじ。
カメオらしくて、めちゃくちゃ面白いと思うから早く形にすればいいのにいつまでも出さないから忘れないように書いておく。
俺もいつかこんな話を書いてみたい。
衝撃だった。
まず、これが自分のアイデアだということもそうだし、ウミオが覚えるほど気に入ってくれていたこともそうだし、何よりそれを今の今まで忘れていたことも。
念のため、自分のメモを漁ると確かにその日付より前に同じアイデアを書いていた。
そりゃ自分のアイデアなんだから面白く思って当然だ。
だが、スランプに悩んでいた自分にはチャンスだ。なんせウミオと何も覚えてなかったカメオが「面白い」と思ったのだ。
これを形にしない手はない。
そう決意したカメオは、久々にペンを執った。
数日後。
出来上がった小説を部内の発表会に出すと、みんなからの評判は上々だった。
中でもウミオは「お前やっとこれ書いたんだな! まさか忘れてたか?」なんて言いながら笑っていた。
カメオがウミオのアイデア帳を見てしまったことを謝ったところ、ウミオが他にも忘れているアイデアがないか問い詰めたのは別の話。
──当作は盗作ではなく倒錯の末に生まれました。
(『トウサク』あとがきより)
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