「これは夢か?」
頬をつねってまったく痛みを感じなかったカメオは、これは現実だと確信した。
いったいなぜ?
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解説:
改造人間・顔面アンパン男のカメオは、自らの顔をちぎって食事として提供することが可能である。全部食べさせちゃっても新しい顔にすげ替えることができるのだ。
ちぎって食事にできる顔であるが、ちぎると痛い。とっても痛い。顔が涙で濡れて力が出なくなりそうになるぐらいに痛い。
しかし、カメオはとてもとても心優しい青年だ。痛みを我慢しながら、目の前のお腹を空かせている人のために自らの頬をつねってちぎるのだ。
そんなカメオは今、目の前の光景を愕然として見ていた。
至る所で上がる黒煙。
巨大な建造物が倒壊する音。
避難をうながす緊迫した怒号。
泣き叫ぶ人々の声。
「これは夢か?」
カメオのそばに1つの人影が近づいてきた。カメオとごく親しい改造人間・顔面カバ男の少年マスオだ。
「カメオさん。痛いよ、怖いよ、お腹が空いたよ」
煤まみれで傷まみれのマスオ少年が、泣きながらカメオのそばまで歩いてきた。
カメオの胸はひどく痛んだ。
どうしてこんな悲惨なことが起こるのか。
どうしてマスオのような子供がこんな辛い思いをしているのか。
「マスオくん大丈夫だよ。さあ、僕の顔をお食べ」
そう言って自らの頬をつねったカメオは、頬の痛みを一切感じなかった。 頬の痛みを、マスオ少年の感じている痛み苦しみへの共感が凌駕していたのだ。
目の前の出来事に共感するだけで頬の痛みを感じないほどに苦しくなるなんて、この状況は夢や妄想なんかじゃない、紛れもない現実だとカメオは確信した。
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