迷子

親に捨てられた二人の子供は
身内もなく、飢えに苦しんでいた。

「おい、坊主らここで何してる。」

ホームレスは二人に声を掛けた。
しかし、返答を待つ前にホームレス
は彼らに驚かされた。
まるで幽霊。骨と皮ばかりの二人。

「お母さん、いなくなっちゃって。
何か食べるものを探してます。」

「こんなところじゃ、草くらい
しか生えてない。」

「草でも何でも、弟の飢えが満た
されれば何でもいいんです。」

心なしか弟より兄の方が細く
見える。何か自分にできることは
ないだろうか。人のために汗を
流すことを嫌って廃人となった
ホームレスの心を弟を思う飢えた
兄が動かした。

どうせ家族も金も価値もない俺だ。
二人の命を救えるなら俺にはもっ
たいないくらいの幸せだ。

「おい。お前。死にたくないなら
俺を殺せ。二人で殺せ。二人で
殺したことにしてもいい。
そしたらお前ら警察のお世話に
なれる。人を殺せばそりゃ長いこと
なれる。そうしたら刑務所の中で
養ってもらえる。飢え死ぬ事もない。」

そう言って彼は大きめの石を兄に
渡す。そして後ろを向いた。

「二人で殴れ」

しかしホームレスは無知であった。
ろくに勉学にも励まなかった男で
あった。
彼らは男を殺したが幼いので
罪に問われなかった。しかし、
警察に注目され、結果として
保護された。

簡易説明
飢えた二人の兄弟が警察に入れば
寝床と食料が確保できると思った
から。