「シナリオ:惜別の夜に温もりを」「16Good」
良質:6票トリック:2票物語:4票納得感:4票
【※あらすじ】
ここは羅寺町。
{あなた}と{助手のだだだだ}はこの街で、心霊絡みの事案を専門的に取り扱う「オカルト探偵」を生業をしています。
あなたの仕事は、{依頼人から寄せられる心霊案件に対し解決策を提示すること}です。
今日もまた、あなたの事務所に誰かがやってきました。
───どうやら、新たな依頼のようです。
******
「あの…幽霊絡みの相談を聞いてくれる探偵事務所ってここで合ってますか…?」
恐る恐るといった様子の男性の問いに、あなたは笑顔で肯定をすると来客用の椅子へと案内をしました。
あなたが用件を訊ねると、男性は静かに、その奇妙な話を語り始めました。
あなたはいつものように、手元のPCに依頼内容の記録をします…。
【※記録】
依頼人:神田信也(35)
・概要
旧梅神病院の206病室にて、女性の幽霊が現れるという噂がある。
206病室には医療用ベッド等の基本的な設備の他、窓側には見舞い客用のパイプ椅子が放置されている。
・噂
深夜に206病室を訪れると、医療用ベッドに窓の方を向いて腰掛ける入院着姿の女が現れる。女は黙ったまま、じっと窓の方を見つめており、暫くすると煙のように消える。
・依頼内容
206病室は、かつて依頼人の大学生時代の恋人・志村美優が入院していた部屋であり、彼女はその後亡くなってしまったそうだ。
梅神病院が移転(・補遺を参照)する前、最後に206病室に入院していたのは志村美優氏であり、彼女の幽霊である可能性は高いと依頼人は考えている。
{彼女の幽霊であるならば、成仏させてあげたいとのこと。}
・経緯
依頼人はかつて地元である羅寺町の大学に通っていたが、卒業後は県外の企業に就職した。最近仕事を辞め、その折に羅寺町に帰ってきたところ、地元の友人から旧梅神病院の噂を聞いた。
・補遺
羅寺町郊外にある旧梅神病院は、14年ほど前に別所に移転した梅神病院のかつての建物であり、現在は廃墟となっている。
【※ルール】
①本問題のFA条件は、{206病室にいる美優の幽霊が成仏する手順}を{信也に提示すること}です。
②あなたの取れる行動は、「{信也に話しかける(質問する)}」または「{だだだだに相談する}」ことです。
{「信也に話しかける(質問する)」場合、質問はYESかNOで答えられるものでなくても構いません。}質問でなくても良いです。
「だだだだに相談する」場合、{質問欄で「だだだだに相談する」ことを明記の上}、次の行動や今の状況、あなたの考えについて相談しましょう。だだだだはあまり推理力がありませんが、{オカルト知識が豊富であり、意外な視点からのヒント}を示してくれます。
{特に解決策に関しては、信也に提示する前にだだだだに確認してもらう}のが良いでしょう。
また、だだだだには{インターネットを用いた情報収集}を頼むこともできます。その場合は「何について調べるのか」を伝えましょう。
【※注意】
①「あなた」はあくまで相談を受け、解決策を示す存在であり、実際に旧梅神病院を訪れることはできません。{解決策の実行は信也の役目なので、彼に任せましょう。}
②{概略を問うような質問に対しては、大まかな回答が返ってくる傾向}があります。まずある程度の事情を聞き出した後は、{気になる点についてより具体的な質問を行い、深掘りをする}ことを奨めます。
③本問題はフィクションです。
大学三年生の秋。
恋人の美優が交通事故にあった。
幸いにも一命は取り留めたが、事故の際に両手首から先が「よくない巻き込まれ方」をしたらしく、切断するしかなかったそうだ。
そのせいで美優は、{小さい頃からやってたピアノが弾けなくなった。}
最初に俺がお見舞いに行ったとき、美優はふいに窓の外の景色を見たり、少し俯いたりしたままであまり目を合わせてくれなかった。
その行動が泣き腫らした目に気づかれないようにするためだと気づいた俺は、かける言葉が見つからず、それこそ腫れ物に触るような調子でくだらない世間話をするのがやっとだった。
美優と付き合い始めたのは大学に入学してすぐのことだった。
小さな頃からピアノをやっていたらしく、本人曰く「長くやっているだけの教養」「趣味みたいなもの」とのことだったが、彼女がピアノについて話すときの熱の入りようから、ただの趣味で片付けられるようなものじゃないことは俺にも分かった。
{美優は快活な性格で、イタズラ交じりのスキンシップが多い賑やかな女の子}だった。
特に、{こっそりと俺の後ろから目を覆い隠して、「だーれだ?」と聞くイタズラがお気に入りのようだった}。
気になって、理由を聞いたことがあった。
名前を呼んでもらうのが好きだからと、子供のように笑ったその表情を、今でも鮮明に覚えている。
******
探偵さんに教えて貰った解決策を実行するため、俺は一人で旧梅神病院を訪れていた。
時刻は1時40分。早めにしたのは、心の準備という意味でも少し余裕が欲しかったからだ。
懐中電灯を片手に玄関前に立つ。
玄関のガラス扉はまるごと撤去されており、気休め程度に数本のバリケードテープが横断しているだけだった。これでは獣でも誰でも入り放題だろう。
ふーっと深呼吸をした俺は、左手でテープを持ち上げながら右手に持った懐中電灯で足元を照らしつつ、病院内へと侵入した。
内部は侵入者たちが捨てた空きペットボトルなどのゴミ、足元にガラスの破片や剥がれ落ちた壁面材が散らばっていたが、落書きもそこまで多くなく綺麗なものだった。
俺は足元に気を付けつつ、受付ロビーの奥にある階段に足をかけた。誰もいない病院内で、自分の足音だけが響く。
階段を昇りきって2階の廊下に出ると、否応なしに恐怖心が心を塗りつぶした。
無理もない。深夜に心霊スポットで独りきり。
何も不安にならない方が異常と言うものだ。
───本当に?
───怖いのは、心霊スポットに独りでいるから?
誰かが、そう言った気がした。
******
見舞いに行く度に、美優との会話は弾まなくなっていった。
入院中、ずっと美優は塞ぎ込んでいた。表面上は明るく取り繕っているのだが、笑顔はどこかぎこちなく、無理をして話題を紡いでいるのは明らかだった。
最初は俺も合わせて、大学であったこととか、最近読んだ本のこととか、とにかく美優が退屈しないように色々な話をした。
今思えば、あれは退屈しないようにじゃなくて、話を途切れさせたら見たくもない現実が視界を塞いでしまうと思ったからだ。
でも、そんな痩せ我慢がいつまでも続くわけもなく。
美優は少しずつ口数が減っていったし、時折思い詰めたように自分の手を見つめることが多くなった。俺もそんな姿を見るのに耐えられなくなって、次第に{窓の外の景色を見て話すことが増えた。}そんな風になってもさっさと帰る選択をしなかったのは、美優を独りにすることに良心の呵責があったからかもしれない。
そういえば、一度だけ美優が妙な様子を見せることがあった。
窓の外を見ながら他愛の無い話をする途中、不意に背後に気配を感じて振り返ると、美優はこちらを向いたままベッドに腰掛けていた。
俺と目が合った美優はそのまま、気まずそうにテレビのワイドショーへと視線を逸らした。
今になって思い返せば、あれは{いつものイタズラをしようとして、手首から先が無いことに改めて戸惑っていたのだろう。}
…あそこで即座に意を汲んでやれていれば結末は違ったかもしれないのに。
当時の俺と来たら気まずさに押し黙るばかりで、美優の気持ちに何一つ応えてやれなかったのだった。
******
懐中電灯を掲げながら、真っ暗な廊下を進んでいく。
旧梅神病院は受付ロビー部分を対象に左右対称の建物で、今自分がいる西側が病棟になっている。
病棟はロの字型の廊下が一周する構造になっており、206病室はロの字の角、つまり、この廊下の一番奥にある部屋だった。
突き当たりに着いた俺は、懐中電灯を掲げ病室の名札を照らした。
当然そこには誰の名もなく、「様」という敬称のみがポツンと残されていた。
その上部に黒のゴシック体でしっかりと、「206」という数字が刻印されている。
時刻は1時50分。ちょうど良い時間だ。
何度目かわからない深呼吸をして、俺は病室の扉に手をかけた。
探偵さんの見立てでは、{美優が現れるのは2時から2時半…丑三つ時の間}だ。まだこの部屋の中には、誰もいないはず。
意を決した俺はゆっくりと扉を開ける。廃墟となって十数年が経っていることから、もしかして開かないかも、なんて思っていたのだが。
…十数年ぶりに入った206病室は、あの頃と変わらない面影を残しながらも、物が少なくなったせいか少し寂しい印象を受けた。医療用ベッドは残っているものの、コールボタンや医療機器は撤去されているし、シーツも剥がされている。元々テレビが備え付けられていた木棚は空になっており、クモの巣だらけになっていた。
ただ、カーテンレールのみが残る天井と、板材が剥き出しのベッド、傍らに置かれたパイプ椅子と残された基本的な設備のみが、ここが病室であった頃の名残をたたえている。
室内は窓から差し込む淡い月明かりに照らされていて、光源が無くとも部屋の様子を捉えることができた。
俺はそっと窓辺のパイプ椅子に近づく。
あの頃と変わらぬ場所に捨て置かれたそれは、青色の座面に分厚い埃が積もっていた。埃が極力舞わないように右手で丁寧に払うと、俺は{ベッドに背を向ける形でパイプ椅子に腰掛けた。}
スマホを取り出して時刻を確認する。
1時55分。2時になったらアラームが鳴るから、それまではじっと座って待つことになる。
窓の外の景色を見ながら、ゆっくりとあの頃のことを思い出す。
相変わらず、拭いきれぬ恐怖心が胸を押さえつけるような感覚があった。
今、なんとなく分かった。
俺が怖いのは心霊スポットに独りでいることでも、これから幽霊が現れるかもしれないからでもない。
もう一度、美優に会うこと。
それがどうしようもなく恐ろしいのだ。
******
冬になって、美優は退院することになった。
俺は無事に退院できたことを心から喜ぶ半面、あの2人だけの気まずい時間が終わることに安堵していた。
退院の時は俺も立ち会いつつ、4年生にあがる前に一度2人で遊びに行く約束をした。
気晴らしに2人で楽しく遊べば、美優もまた以前のように明るい性格に戻るかもしれないと、何の根拠も無い期待があったのが半分。
もう半分は、入院中の気まずい時間を経て崩れた2人の関係を、さっさと新しい思い出で塗り潰してしまいたかったという自分の我儘だった。
結局、その約束が果たされることはなかった。
退院から1週間ほど経ったある日、{美優は住んでいるアパートの屋上から飛び降りて亡くなった。}
遺書こそ見つからなかったものの、事故の件と入院時の様子から、両手首から先を失ったことを苦にした自殺ということでカタがついた。
…そうだ。
美優はピアノが大好きで、事故で弾けなくなったから…それで絶望して死んだ。それは事実だろう。
───だから、俺にできたことなんて、何もなかった筈なんだ。
卒業後、俺は逃げるように県外の企業に就職した。
大して志望度は高くなかったが、この町から出ていけるならなんだって良かった。
******
ヴーッ、ヴーッ
どこか遠く離れかけていた俺の意識を、携帯のバイブ音が現実に引き戻した。
大慌てでスマホを取り出し、自分でセットしたアラームを止める。
当たり前だが、時刻はちょうど2時を回ったところだった。
──ふと。
背後の空気が揺らいだ気がした。
背中越しに伝わってくる、生き物の、いや、生きてはいない何かの気配。
それでもどこか懐かしさを感じるのは、俺が"そう"信じたいからだろうか。
鼓動が浅く、早くなり、息苦しさで喉がつまる。落ち着け。探偵さんに言われた通りに。
俺は指示された通り、{後ろを振り返らずに目を閉じた。}
すると、背後から微かに衣擦れの音がして、俺の頭の左右に、ヒヤリとした感覚が触れた。
いや、実際には触れたわけではないのだろう。ただ、温もりの無い鉄管のようなものが傍らにある、その感覚だけがあった。
{「だーれだ?」}
{「…………美優」}
そう答えると、傍らにあった冷たい何かがすっと戻っていくような気がした。
静かに目を開き、ゆっくりと後ろを振り向く。
そこには、ベッドに腰掛け、穏やかな笑顔でこちらを見つめる入院着姿の美優がいた。
少し痩せた頬も。
白くなった肌も。
痛々しい傷跡が残る、手首から先の無い腕も。
少し芝居がかった口調で問う、その声も。
何から何まで、退院した当時の美優のままだった。
「………美優」
続く言葉を探している内に、いつの間にか涙が溢れていた。
それと同時に、ずっと心に残っていた様々なことが一気に脳内に散らかってしまって、何も言えなくなってしまう。
それでも無意識のうちに、口をついて出ていたのは───
「ごめん…ごめんよ…」
「俺のせいだ…俺がきみを…」
「俺は…気付けなかった…俺のせいで…」
「…ごめん ごめんなさい…」
子供のように泣きじゃくりながら、ひたすら謝り続ける俺の言葉を美優は黙って聞いていた。
そのうち、ひとしきり吐き出し終わった俺がえずいていると、美優はおもむろに口を開いた。
「…信也」
「大丈夫、謝らないで」
その声にゆっくりと顔を上げると、美優もまた泣いていた。
「私こそごめんね、あんなお別れになってしまったから」
「信也を酷く傷つけてしまった」
そんなことない、と言おうとした俺を、美優は視線で制止した。
「…ピアノは大好きだったよ」
「だから、もう二度と弾けない身体になって、死ぬほど辛かった」
「…だけど」
今度は俺が黙って聞く番だった。ただ、美優が俺に何を伝えようとしているのかは、この時点でなんとなく分かっていた。
「それでも入院中は、ぎりぎり何とか踏みとどまれたの」
「信也がいつもお見舞いに来てくれたから」
「ピアノも大事だったけど、信也が一緒にいてくれればきっと大丈夫だって」
「そう思えたの」
じゃあなんで、とは聞かなかった。
探偵さんとの話を通して、俺はもうその答えを知っていた、いや"思い出していた"からだ。
「…でもあの日、{病室で信也の後ろ姿に手を伸ばした時}」
「ああ二度と、一番好きな人と一番好きなやり取りができないんだなぁって」
「習慣だった"これ"を思い出す度に辛い記憶が甦っちゃうのかなぁって」
それでも、やはり幽霊とはいえ本人の口から聞くのはどうしようもなく堪える。結局は俺の弱さが、美優の心にとどめをさすことになってしまった。
美優を殺したのは俺だったのだ。
だが、続いて美優の口から出たのは、予想外のものだった。
「…だからね、私が弱かったせいなの」
「信也との繋がりはそれだけじゃなかったのに、私が勝手に諦めてしまった」
「だから、信也には謝らないで欲しい」
「私は何も恨んでないよ」
その話す美優の口調はいつの間にか、かつての溌剌とした声色に戻っていた。
「───でも、俺は」
「逃げたんだ」
恨まないと言う相手の前で、言い訳のように自分の非を主張する。傍だけ見れば、まるで拗ねた子供みたいに見えたことだろう。
この期に及んで、まだ俺は赦されようとしていた。
「美優が死んだあと、県外で働くことにしたんだよ」
「もうこの町にいたくなかったから」
「…本当は分かってた。あの時美優がどんな思いだったか」
「何も気付けなかった自分の罪を認めるのが怖くて、全部放って逃げ出したんだ」
少しだけ美優の目が見開いた。自分が死んだ後の事は初耳だったからかもしれない。幽霊もそういうものなのかは知らないけれど。
「俺がもっと早く来ていれば、十年以上もこんなところに────」
「…でも」
俺の話は今度は視線ではなく、言葉で遮られた。
「また来てくれた」
「…私は、それで十分だよ」
******
随分長い時間が経ったようだった。
その後俺たちは、昔みたいに他愛の無い話をした。途中、泣き止んでまた思い出しては泣いてと、ひたすらに目元が忙しかった。
卒業後のこと、初めて会ったときのこと。
お互いの好きだったところ。
…と、俺が仕事を辞めたこと。
これに関しては美優も驚いていた。幽霊を驚かせる体験なんて後にも先にもこれっきりだと思う。
そんな話の終わりを告げたのは、自分のスマホのバイブ音だった。
美優は丑三つ時…つまり2時から2時半までの30分しかこちらに居られない。
{未練を解いてしまった今、この病室に美優が現れることは二度と無いだろう。}
1回目のアラームは、2時半の少し前に鳴るように設定していた。
「もう時間だね」
アラームの意味を察したのだろう。美優からそれとなく切り出した。
「あのさ、一個お願いがあるの」
そう言った美優は、また少し見開いた真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「もし"次"があったらさ、また恋人になってくれる?」
彼女の言う「次」が、気が遠くなるほど未来の話かもしれないことは分かっていた。
それでも俺の口は、ひとりでに身勝手な約束を交わした。
「ああ、勿論だ」
それを聞いた美優はまた弾けるような笑顔になって、手首から先の無い腕をこちらに差し出してきた。
俺は美優の手首を包むように握りしめると、そこにはある筈の無い、微かな温もりがあった。
「────信也」
・・
「またね」
・・
「ああ、またな」
2回目のアラームが鳴ったとき、もうそこに美優の姿はなかった。
いつの間にか空になった手のひらには、幻のような熱だけが遺っていた。
******
後日、探偵事務所にて。
「あなた」は珈琲を啜りながら、神田信也氏からの丁寧なお礼のメールと、受け取った報酬が入った茶封筒を眺めています。
やや厚みのある茶封筒から察するに、あなたの提示した額よりかなり色をつけてくれたようです。仕事辞めたって言ってたけど大丈夫なのかな、と少し心配になりますが、貰えるものは貰っておくことにしました。
「生きた人間の未練の方が厄介なことってありますよねぇ」
あなたが依頼人について考えていることに気づいたのか、あるいはいつもの能天気な世間話か、助手のだだだだが他人事のように呟きました。
あなたはそれを半ば無視しつつ、事務所のPCで依頼窓口をチェックします。今回は自力で解決できたためにしっかりと報酬を得ることができましたが、もっと厄介な依頼もあります。
そういった仕事はあなたの手には負えないので、伝手のある霊能者を紹介し、紹介料+相談料という形で報酬を貰うことになります。
当然その場合は自力で解決した場合よりも報酬が少なくなりますから、とにかく数をこなすのが重要です。世間話に付き合っている暇はないのです。
「そういえば知ってます?町外れに寂れたトンネルあるじゃないですか。"梅神トンネル"だかなんとか」
気にせずだだだだは世間話を続けます。有事以外はほぼ仕事をしない彼にも、雇用主である以上給与を払わなければなりません。なんだか頭が痛くなってきました。
「あそこになんか、めっちゃ足速い爺さんが出るって噂あるらしいんですよ。なんか依頼来るかもしれないですね~」
それはただの元気なお爺さんの不審者じゃないかな、とあなたは思いましたが、付き合ったら負けなのでやはり無視することにしました。
今日も町並みは変わらず、いつもと同じ日常が流れます。
しかしそんな日常の、誰も気付かない僅かな隙間から、この世ならざる者たちがあなたを見つめているのかもしれません。
ここは羅寺町オカルト探偵事務所。
ご縁があれば、またどこかで。
~Fin~
【{A、丑三つ時(2時)になる前に見舞い客用のパイプ椅子にベッドに背を向けた状態で座る。その後美優の幽霊が現れたら目を閉じ、最後に一番好きだったイタズラをさせてあげる。きちんと名前を呼ぶことを忘れずに。}】
【※想定ルート】
①信也への質問やインターネットによる情報収集を使って、以下の事柄を明らかにする(抜粋)。※はインターネット情報
・美優は事故で両腕を失い、入院していた。
・美優はイタズラ好きな明るい女の子だった。
・入院中は見舞い客用の椅子に座った信也と2人で話すことが多かった。
・信也が仕事を辞めたのは、元々志望度の低い会社で、働いている内にしんどくなってしまったから。
・美優が亡くなった原因は自殺。
・美優の幽霊は丑三つ時に現れる。※
②以上の情報から気になる点を深掘りする。
・自殺の原因
→ピアノが弾けなくなったことを苦にして自殺したという信也の考えを聞く。
・イタズラの内容
→特に背後から目隠しして「だーれだ?」と聞くのが好きだったということを聞く。
このタイミングでだだだだに相談すると、「自殺した霊は自殺の原因が未練と関係していることが多い」、「未練を残した霊は未練に関係する場所に現れるのが普通である」ことを教えてくれる。
③信也に「本当の自殺の原因」について心当たりが無いか聞く。
②のだだだだのヒントから、「ピアノが弾けないことが原因で自殺したのならピアノが未練になる筈だが、だとすれば病室に現れることはおかしい」という推理をする。
つまり、美優の未練は病室での出来事にある。
なお、この点は「信也がわざわざ県外の志望度の低い会社に就職したこと」や、「自殺の原因について聞いた際にやや歯切れの悪い様子」をしていることから、「信也が美優の自殺に後ろめたさを感じている」と推理できることもフレーバーになっている。
上記の矛盾を突きつけて信也を問いつめると、「一度だけ、お見舞い中に窓の外を見ていたとき、美優が目隠しのイタズラをしようとしていたかもしれない」ということを聞ける。
④③の内容と、美優の幽霊が向いている方向(問題文から、美優は窓際=パイプ椅子がある方を向いていることが推理できる)から、美優の未練は「信也にもう一度お決まりのイタズラをし、名前を呼んで貰うこと」だと推理。
なお、この解決策をだだだだにチェックさせると、「美優の幽霊が現れる丑三つ時になる前に入室し、ベッドに背中をむけて座っておくこと」や「美優は目隠しができないため自分で目を瞑っておくこと」などの細かい手順のヒントをくれる。
あとは信也に手順を提示してFA。
ここは羅寺町。
{あなた}と{助手のだだだだ}はこの街で、心霊絡みの事案を専門的に取り扱う「オカルト探偵」を生業をしています。
あなたの仕事は、{依頼人から寄せられる心霊案件に対し解決策を提示すること}です。
今日もまた、あなたの事務所に誰かがやってきました。
───どうやら、新たな依頼のようです。
******
「あの…幽霊絡みの相談を聞いてくれる探偵事務所ってここで合ってますか…?」
恐る恐るといった様子の男性の問いに、あなたは笑顔で肯定をすると来客用の椅子へと案内をしました。
あなたが用件を訊ねると、男性は静かに、その奇妙な話を語り始めました。
あなたはいつものように、手元のPCに依頼内容の記録をします…。
【※記録】
依頼人:神田信也(35)
・概要
旧梅神病院の206病室にて、女性の幽霊が現れるという噂がある。
206病室には医療用ベッド等の基本的な設備の他、窓側には見舞い客用のパイプ椅子が放置されている。
・噂
深夜に206病室を訪れると、医療用ベッドに窓の方を向いて腰掛ける入院着姿の女が現れる。女は黙ったまま、じっと窓の方を見つめており、暫くすると煙のように消える。
・依頼内容
206病室は、かつて依頼人の大学生時代の恋人・志村美優が入院していた部屋であり、彼女はその後亡くなってしまったそうだ。
梅神病院が移転(・補遺を参照)する前、最後に206病室に入院していたのは志村美優氏であり、彼女の幽霊である可能性は高いと依頼人は考えている。
{彼女の幽霊であるならば、成仏させてあげたいとのこと。}
・経緯
依頼人はかつて地元である羅寺町の大学に通っていたが、卒業後は県外の企業に就職した。最近仕事を辞め、その折に羅寺町に帰ってきたところ、地元の友人から旧梅神病院の噂を聞いた。
・補遺
羅寺町郊外にある旧梅神病院は、14年ほど前に別所に移転した梅神病院のかつての建物であり、現在は廃墟となっている。
【※ルール】
①本問題のFA条件は、{206病室にいる美優の幽霊が成仏する手順}を{信也に提示すること}です。
②あなたの取れる行動は、「{信也に話しかける(質問する)}」または「{だだだだに相談する}」ことです。
{「信也に話しかける(質問する)」場合、質問はYESかNOで答えられるものでなくても構いません。}質問でなくても良いです。
「だだだだに相談する」場合、{質問欄で「だだだだに相談する」ことを明記の上}、次の行動や今の状況、あなたの考えについて相談しましょう。だだだだはあまり推理力がありませんが、{オカルト知識が豊富であり、意外な視点からのヒント}を示してくれます。
{特に解決策に関しては、信也に提示する前にだだだだに確認してもらう}のが良いでしょう。
また、だだだだには{インターネットを用いた情報収集}を頼むこともできます。その場合は「何について調べるのか」を伝えましょう。
【※注意】
①「あなた」はあくまで相談を受け、解決策を示す存在であり、実際に旧梅神病院を訪れることはできません。{解決策の実行は信也の役目なので、彼に任せましょう。}
②{概略を問うような質問に対しては、大まかな回答が返ってくる傾向}があります。まずある程度の事情を聞き出した後は、{気になる点についてより具体的な質問を行い、深掘りをする}ことを奨めます。
③本問題はフィクションです。
25年09月13日 21:00
【新・形式】 [だだだだ3号機]
【新・形式】 [だだだだ3号機]

新形式です!参加前にルールを及び注意点をよくお読み下さい!
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大学三年生の秋。
恋人の美優が交通事故にあった。
幸いにも一命は取り留めたが、事故の際に両手首から先が「よくない巻き込まれ方」をしたらしく、切断するしかなかったそうだ。
そのせいで美優は、{小さい頃からやってたピアノが弾けなくなった。}
最初に俺がお見舞いに行ったとき、美優はふいに窓の外の景色を見たり、少し俯いたりしたままであまり目を合わせてくれなかった。
その行動が泣き腫らした目に気づかれないようにするためだと気づいた俺は、かける言葉が見つからず、それこそ腫れ物に触るような調子でくだらない世間話をするのがやっとだった。
美優と付き合い始めたのは大学に入学してすぐのことだった。
小さな頃からピアノをやっていたらしく、本人曰く「長くやっているだけの教養」「趣味みたいなもの」とのことだったが、彼女がピアノについて話すときの熱の入りようから、ただの趣味で片付けられるようなものじゃないことは俺にも分かった。
{美優は快活な性格で、イタズラ交じりのスキンシップが多い賑やかな女の子}だった。
特に、{こっそりと俺の後ろから目を覆い隠して、「だーれだ?」と聞くイタズラがお気に入りのようだった}。
気になって、理由を聞いたことがあった。
名前を呼んでもらうのが好きだからと、子供のように笑ったその表情を、今でも鮮明に覚えている。
******
探偵さんに教えて貰った解決策を実行するため、俺は一人で旧梅神病院を訪れていた。
時刻は1時40分。早めにしたのは、心の準備という意味でも少し余裕が欲しかったからだ。
懐中電灯を片手に玄関前に立つ。
玄関のガラス扉はまるごと撤去されており、気休め程度に数本のバリケードテープが横断しているだけだった。これでは獣でも誰でも入り放題だろう。
ふーっと深呼吸をした俺は、左手でテープを持ち上げながら右手に持った懐中電灯で足元を照らしつつ、病院内へと侵入した。
内部は侵入者たちが捨てた空きペットボトルなどのゴミ、足元にガラスの破片や剥がれ落ちた壁面材が散らばっていたが、落書きもそこまで多くなく綺麗なものだった。
俺は足元に気を付けつつ、受付ロビーの奥にある階段に足をかけた。誰もいない病院内で、自分の足音だけが響く。
階段を昇りきって2階の廊下に出ると、否応なしに恐怖心が心を塗りつぶした。
無理もない。深夜に心霊スポットで独りきり。
何も不安にならない方が異常と言うものだ。
───本当に?
───怖いのは、心霊スポットに独りでいるから?
誰かが、そう言った気がした。
******
見舞いに行く度に、美優との会話は弾まなくなっていった。
入院中、ずっと美優は塞ぎ込んでいた。表面上は明るく取り繕っているのだが、笑顔はどこかぎこちなく、無理をして話題を紡いでいるのは明らかだった。
最初は俺も合わせて、大学であったこととか、最近読んだ本のこととか、とにかく美優が退屈しないように色々な話をした。
今思えば、あれは退屈しないようにじゃなくて、話を途切れさせたら見たくもない現実が視界を塞いでしまうと思ったからだ。
でも、そんな痩せ我慢がいつまでも続くわけもなく。
美優は少しずつ口数が減っていったし、時折思い詰めたように自分の手を見つめることが多くなった。俺もそんな姿を見るのに耐えられなくなって、次第に{窓の外の景色を見て話すことが増えた。}そんな風になってもさっさと帰る選択をしなかったのは、美優を独りにすることに良心の呵責があったからかもしれない。
そういえば、一度だけ美優が妙な様子を見せることがあった。
窓の外を見ながら他愛の無い話をする途中、不意に背後に気配を感じて振り返ると、美優はこちらを向いたままベッドに腰掛けていた。
俺と目が合った美優はそのまま、気まずそうにテレビのワイドショーへと視線を逸らした。
今になって思い返せば、あれは{いつものイタズラをしようとして、手首から先が無いことに改めて戸惑っていたのだろう。}
…あそこで即座に意を汲んでやれていれば結末は違ったかもしれないのに。
当時の俺と来たら気まずさに押し黙るばかりで、美優の気持ちに何一つ応えてやれなかったのだった。
******
懐中電灯を掲げながら、真っ暗な廊下を進んでいく。
旧梅神病院は受付ロビー部分を対象に左右対称の建物で、今自分がいる西側が病棟になっている。
病棟はロの字型の廊下が一周する構造になっており、206病室はロの字の角、つまり、この廊下の一番奥にある部屋だった。
突き当たりに着いた俺は、懐中電灯を掲げ病室の名札を照らした。
当然そこには誰の名もなく、「様」という敬称のみがポツンと残されていた。
その上部に黒のゴシック体でしっかりと、「206」という数字が刻印されている。
時刻は1時50分。ちょうど良い時間だ。
何度目かわからない深呼吸をして、俺は病室の扉に手をかけた。
探偵さんの見立てでは、{美優が現れるのは2時から2時半…丑三つ時の間}だ。まだこの部屋の中には、誰もいないはず。
意を決した俺はゆっくりと扉を開ける。廃墟となって十数年が経っていることから、もしかして開かないかも、なんて思っていたのだが。
…十数年ぶりに入った206病室は、あの頃と変わらない面影を残しながらも、物が少なくなったせいか少し寂しい印象を受けた。医療用ベッドは残っているものの、コールボタンや医療機器は撤去されているし、シーツも剥がされている。元々テレビが備え付けられていた木棚は空になっており、クモの巣だらけになっていた。
ただ、カーテンレールのみが残る天井と、板材が剥き出しのベッド、傍らに置かれたパイプ椅子と残された基本的な設備のみが、ここが病室であった頃の名残をたたえている。
室内は窓から差し込む淡い月明かりに照らされていて、光源が無くとも部屋の様子を捉えることができた。
俺はそっと窓辺のパイプ椅子に近づく。
あの頃と変わらぬ場所に捨て置かれたそれは、青色の座面に分厚い埃が積もっていた。埃が極力舞わないように右手で丁寧に払うと、俺は{ベッドに背を向ける形でパイプ椅子に腰掛けた。}
スマホを取り出して時刻を確認する。
1時55分。2時になったらアラームが鳴るから、それまではじっと座って待つことになる。
窓の外の景色を見ながら、ゆっくりとあの頃のことを思い出す。
相変わらず、拭いきれぬ恐怖心が胸を押さえつけるような感覚があった。
今、なんとなく分かった。
俺が怖いのは心霊スポットに独りでいることでも、これから幽霊が現れるかもしれないからでもない。
もう一度、美優に会うこと。
それがどうしようもなく恐ろしいのだ。
******
冬になって、美優は退院することになった。
俺は無事に退院できたことを心から喜ぶ半面、あの2人だけの気まずい時間が終わることに安堵していた。
退院の時は俺も立ち会いつつ、4年生にあがる前に一度2人で遊びに行く約束をした。
気晴らしに2人で楽しく遊べば、美優もまた以前のように明るい性格に戻るかもしれないと、何の根拠も無い期待があったのが半分。
もう半分は、入院中の気まずい時間を経て崩れた2人の関係を、さっさと新しい思い出で塗り潰してしまいたかったという自分の我儘だった。
結局、その約束が果たされることはなかった。
退院から1週間ほど経ったある日、{美優は住んでいるアパートの屋上から飛び降りて亡くなった。}
遺書こそ見つからなかったものの、事故の件と入院時の様子から、両手首から先を失ったことを苦にした自殺ということでカタがついた。
…そうだ。
美優はピアノが大好きで、事故で弾けなくなったから…それで絶望して死んだ。それは事実だろう。
───だから、俺にできたことなんて、何もなかった筈なんだ。
卒業後、俺は逃げるように県外の企業に就職した。
大して志望度は高くなかったが、この町から出ていけるならなんだって良かった。
******
ヴーッ、ヴーッ
どこか遠く離れかけていた俺の意識を、携帯のバイブ音が現実に引き戻した。
大慌てでスマホを取り出し、自分でセットしたアラームを止める。
当たり前だが、時刻はちょうど2時を回ったところだった。
──ふと。
背後の空気が揺らいだ気がした。
背中越しに伝わってくる、生き物の、いや、生きてはいない何かの気配。
それでもどこか懐かしさを感じるのは、俺が"そう"信じたいからだろうか。
鼓動が浅く、早くなり、息苦しさで喉がつまる。落ち着け。探偵さんに言われた通りに。
俺は指示された通り、{後ろを振り返らずに目を閉じた。}
すると、背後から微かに衣擦れの音がして、俺の頭の左右に、ヒヤリとした感覚が触れた。
いや、実際には触れたわけではないのだろう。ただ、温もりの無い鉄管のようなものが傍らにある、その感覚だけがあった。
{「だーれだ?」}
{「…………美優」}
そう答えると、傍らにあった冷たい何かがすっと戻っていくような気がした。
静かに目を開き、ゆっくりと後ろを振り向く。
そこには、ベッドに腰掛け、穏やかな笑顔でこちらを見つめる入院着姿の美優がいた。
少し痩せた頬も。
白くなった肌も。
痛々しい傷跡が残る、手首から先の無い腕も。
少し芝居がかった口調で問う、その声も。
何から何まで、退院した当時の美優のままだった。
「………美優」
続く言葉を探している内に、いつの間にか涙が溢れていた。
それと同時に、ずっと心に残っていた様々なことが一気に脳内に散らかってしまって、何も言えなくなってしまう。
それでも無意識のうちに、口をついて出ていたのは───
「ごめん…ごめんよ…」
「俺のせいだ…俺がきみを…」
「俺は…気付けなかった…俺のせいで…」
「…ごめん ごめんなさい…」
子供のように泣きじゃくりながら、ひたすら謝り続ける俺の言葉を美優は黙って聞いていた。
そのうち、ひとしきり吐き出し終わった俺がえずいていると、美優はおもむろに口を開いた。
「…信也」
「大丈夫、謝らないで」
その声にゆっくりと顔を上げると、美優もまた泣いていた。
「私こそごめんね、あんなお別れになってしまったから」
「信也を酷く傷つけてしまった」
そんなことない、と言おうとした俺を、美優は視線で制止した。
「…ピアノは大好きだったよ」
「だから、もう二度と弾けない身体になって、死ぬほど辛かった」
「…だけど」
今度は俺が黙って聞く番だった。ただ、美優が俺に何を伝えようとしているのかは、この時点でなんとなく分かっていた。
「それでも入院中は、ぎりぎり何とか踏みとどまれたの」
「信也がいつもお見舞いに来てくれたから」
「ピアノも大事だったけど、信也が一緒にいてくれればきっと大丈夫だって」
「そう思えたの」
じゃあなんで、とは聞かなかった。
探偵さんとの話を通して、俺はもうその答えを知っていた、いや"思い出していた"からだ。
「…でもあの日、{病室で信也の後ろ姿に手を伸ばした時}」
「ああ二度と、一番好きな人と一番好きなやり取りができないんだなぁって」
「習慣だった"これ"を思い出す度に辛い記憶が甦っちゃうのかなぁって」
それでも、やはり幽霊とはいえ本人の口から聞くのはどうしようもなく堪える。結局は俺の弱さが、美優の心にとどめをさすことになってしまった。
美優を殺したのは俺だったのだ。
だが、続いて美優の口から出たのは、予想外のものだった。
「…だからね、私が弱かったせいなの」
「信也との繋がりはそれだけじゃなかったのに、私が勝手に諦めてしまった」
「だから、信也には謝らないで欲しい」
「私は何も恨んでないよ」
その話す美優の口調はいつの間にか、かつての溌剌とした声色に戻っていた。
「───でも、俺は」
「逃げたんだ」
恨まないと言う相手の前で、言い訳のように自分の非を主張する。傍だけ見れば、まるで拗ねた子供みたいに見えたことだろう。
この期に及んで、まだ俺は赦されようとしていた。
「美優が死んだあと、県外で働くことにしたんだよ」
「もうこの町にいたくなかったから」
「…本当は分かってた。あの時美優がどんな思いだったか」
「何も気付けなかった自分の罪を認めるのが怖くて、全部放って逃げ出したんだ」
少しだけ美優の目が見開いた。自分が死んだ後の事は初耳だったからかもしれない。幽霊もそういうものなのかは知らないけれど。
「俺がもっと早く来ていれば、十年以上もこんなところに────」
「…でも」
俺の話は今度は視線ではなく、言葉で遮られた。
「また来てくれた」
「…私は、それで十分だよ」
******
随分長い時間が経ったようだった。
その後俺たちは、昔みたいに他愛の無い話をした。途中、泣き止んでまた思い出しては泣いてと、ひたすらに目元が忙しかった。
卒業後のこと、初めて会ったときのこと。
お互いの好きだったところ。
…と、俺が仕事を辞めたこと。
これに関しては美優も驚いていた。幽霊を驚かせる体験なんて後にも先にもこれっきりだと思う。
そんな話の終わりを告げたのは、自分のスマホのバイブ音だった。
美優は丑三つ時…つまり2時から2時半までの30分しかこちらに居られない。
{未練を解いてしまった今、この病室に美優が現れることは二度と無いだろう。}
1回目のアラームは、2時半の少し前に鳴るように設定していた。
「もう時間だね」
アラームの意味を察したのだろう。美優からそれとなく切り出した。
「あのさ、一個お願いがあるの」
そう言った美優は、また少し見開いた真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「もし"次"があったらさ、また恋人になってくれる?」
彼女の言う「次」が、気が遠くなるほど未来の話かもしれないことは分かっていた。
それでも俺の口は、ひとりでに身勝手な約束を交わした。
「ああ、勿論だ」
それを聞いた美優はまた弾けるような笑顔になって、手首から先の無い腕をこちらに差し出してきた。
俺は美優の手首を包むように握りしめると、そこにはある筈の無い、微かな温もりがあった。
「────信也」
・・
「またね」
・・
「ああ、またな」
2回目のアラームが鳴ったとき、もうそこに美優の姿はなかった。
いつの間にか空になった手のひらには、幻のような熱だけが遺っていた。
******
後日、探偵事務所にて。
「あなた」は珈琲を啜りながら、神田信也氏からの丁寧なお礼のメールと、受け取った報酬が入った茶封筒を眺めています。
やや厚みのある茶封筒から察するに、あなたの提示した額よりかなり色をつけてくれたようです。仕事辞めたって言ってたけど大丈夫なのかな、と少し心配になりますが、貰えるものは貰っておくことにしました。
「生きた人間の未練の方が厄介なことってありますよねぇ」
あなたが依頼人について考えていることに気づいたのか、あるいはいつもの能天気な世間話か、助手のだだだだが他人事のように呟きました。
あなたはそれを半ば無視しつつ、事務所のPCで依頼窓口をチェックします。今回は自力で解決できたためにしっかりと報酬を得ることができましたが、もっと厄介な依頼もあります。
そういった仕事はあなたの手には負えないので、伝手のある霊能者を紹介し、紹介料+相談料という形で報酬を貰うことになります。
当然その場合は自力で解決した場合よりも報酬が少なくなりますから、とにかく数をこなすのが重要です。世間話に付き合っている暇はないのです。
「そういえば知ってます?町外れに寂れたトンネルあるじゃないですか。"梅神トンネル"だかなんとか」
気にせずだだだだは世間話を続けます。有事以外はほぼ仕事をしない彼にも、雇用主である以上給与を払わなければなりません。なんだか頭が痛くなってきました。
「あそこになんか、めっちゃ足速い爺さんが出るって噂あるらしいんですよ。なんか依頼来るかもしれないですね~」
それはただの元気なお爺さんの不審者じゃないかな、とあなたは思いましたが、付き合ったら負けなのでやはり無視することにしました。
今日も町並みは変わらず、いつもと同じ日常が流れます。
しかしそんな日常の、誰も気付かない僅かな隙間から、この世ならざる者たちがあなたを見つめているのかもしれません。
ここは羅寺町オカルト探偵事務所。
ご縁があれば、またどこかで。
~Fin~
【{A、丑三つ時(2時)になる前に見舞い客用のパイプ椅子にベッドに背を向けた状態で座る。その後美優の幽霊が現れたら目を閉じ、最後に一番好きだったイタズラをさせてあげる。きちんと名前を呼ぶことを忘れずに。}】
【※想定ルート】
①信也への質問やインターネットによる情報収集を使って、以下の事柄を明らかにする(抜粋)。※はインターネット情報
・美優は事故で両腕を失い、入院していた。
・美優はイタズラ好きな明るい女の子だった。
・入院中は見舞い客用の椅子に座った信也と2人で話すことが多かった。
・信也が仕事を辞めたのは、元々志望度の低い会社で、働いている内にしんどくなってしまったから。
・美優が亡くなった原因は自殺。
・美優の幽霊は丑三つ時に現れる。※
②以上の情報から気になる点を深掘りする。
・自殺の原因
→ピアノが弾けなくなったことを苦にして自殺したという信也の考えを聞く。
・イタズラの内容
→特に背後から目隠しして「だーれだ?」と聞くのが好きだったということを聞く。
このタイミングでだだだだに相談すると、「自殺した霊は自殺の原因が未練と関係していることが多い」、「未練を残した霊は未練に関係する場所に現れるのが普通である」ことを教えてくれる。
③信也に「本当の自殺の原因」について心当たりが無いか聞く。
②のだだだだのヒントから、「ピアノが弾けないことが原因で自殺したのならピアノが未練になる筈だが、だとすれば病室に現れることはおかしい」という推理をする。
つまり、美優の未練は病室での出来事にある。
なお、この点は「信也がわざわざ県外の志望度の低い会社に就職したこと」や、「自殺の原因について聞いた際にやや歯切れの悪い様子」をしていることから、「信也が美優の自殺に後ろめたさを感じている」と推理できることもフレーバーになっている。
上記の矛盾を突きつけて信也を問いつめると、「一度だけ、お見舞い中に窓の外を見ていたとき、美優が目隠しのイタズラをしようとしていたかもしれない」ということを聞ける。
④③の内容と、美優の幽霊が向いている方向(問題文から、美優は窓際=パイプ椅子がある方を向いていることが推理できる)から、美優の未練は「信也にもう一度お決まりのイタズラをし、名前を呼んで貰うこと」だと推理。
なお、この解決策をだだだだにチェックさせると、「美優の幽霊が現れる丑三つ時になる前に入室し、ベッドに背中をむけて座っておくこと」や「美優は目隠しができないため自分で目を瞑っておくこと」などの細かい手順のヒントをくれる。
あとは信也に手順を提示してFA。
「拝啓、6月のいちばん遠い場所から」「15Good」
良質:6票物語:8票納得感:1票
雨が降るたび机から双眼鏡を取り出して、窓の外を眺める純太郎。
噂では『【双眼鏡で女性の下着をウォッチングする変態クソヤロー】』とのことだが。
しかしレンズを一生懸命覗く姿を偶然見つけた時、
私は『これは【{生き別れた妹}】を探すため』という彼の言葉を信じることにした。
一体なぜ?
※SP:みづさん
※解説文の挿絵をくろださんに描いていただきました、お楽しみに!
※『創りだす38 ほうき星をナントヤラ』のオマージュです。
(https://late-late.jp/mondai/show/15053)
噂では『【双眼鏡で女性の下着をウォッチングする変態クソヤロー】』とのことだが。
しかしレンズを一生懸命覗く姿を偶然見つけた時、
私は『これは【{生き別れた妹}】を探すため』という彼の言葉を信じることにした。
一体なぜ?
※SP:みづさん
※解説文の挿絵をくろださんに描いていただきました、お楽しみに!
※『創りだす38 ほうき星をナントヤラ』のオマージュです。
(https://late-late.jp/mondai/show/15053)
22年06月26日 22:01
【ウミガメのスープ】 [弥七]
【ウミガメのスープ】 [弥七]

6月の雨には、物語スープを。
解説を見る
【簡易解答】
双眼鏡に押し当てた目から化粧が剥がれ、色の無い素肌が現れたことで、純太郎が透明人間であると知った。彼は雨の日に窓の外を観察することで、同じように剥がれて現れる『透明人間の家族』を探しているのだと気付いたから。
ここからいちばん遠いところは自分の背中である。
(寺山修司)
(J Kは 6月なんて 好きじゃない!)
放課後、予報はずれの雨を前に、心の一句。
毎日1時間かかるお化粧が、あっという間にぐずぐずになるのが私は嫌いだった。
そんな顔、女子高生なら誰だって見られたくないでしょう?
机に置き傘があったっけ、と教室へ戻ったとき
隣のクラスから微かな声が聞こえた。
「始めようか天体観測、ほうき星をナントヤラ〜♪…」
2分後に誰も来ないと思って、鼻歌なんか歌っている。
扉の隙間から覗くと、彼がちょうど机から『あれ』を取り出すところだった。
ああ、学校の七不思議とは言わずとも。
噂の現場を、目撃した。
ジュンタロー先輩の奇行が知れ渡ったのは、6月の梅雨入りからだった。
雨が降るたび、一生懸命双眼鏡で窓の外を観察している。
私の友達は、『双眼鏡で女性の透けた下着をウォッチングする変態クソヤロー』
だと言っていた。みんなも、たぶん、きっとそうだと。
女の敵じゃん、サイテーじゃん。
と非難轟々。でも本当にそうだろうか?
彼は意に介さないようだが、たった一度だけ「妹を探している」と弁明した。
無事に一蹴されてロリコンに昇格したけれども。
仮にそれが嘘だとして、
そんな虚言で上塗りする意味がどこにあるのか??
先輩の家族のことは、誰も知らない。
ただ母親が、小さい頃に消えてしまったのだと、聞いている。
文字通り、消えてしまったのだと。
その真実は、子供ながら「お星様になった」なんて詩的に表現する事柄なのかもしれない。
しかし机から双眼鏡を取り出す
彼の天体観測は誰の目にもロマンチックに映らなかった。
ただ、
そんなレンズを覗き込む顔に、気付いた人は他にいるのだろうか。
(なるほど、ね。)
私はみつけてしまった。
擦れて化粧が剥がれ、透明な素肌が現れた、あの目を。
「見えないものを見ようとして〜…」
彼の鼻歌は、まだ続く。
『透明人間』
がこの世に、いや目の前に存在するということ。
彼の思惑が理解されないように、
私がいま見た現実も、周囲にはわかってもらえないだろう。
そりゃあそうだ。
どちらもすべて理解してくれるのは、『同類』しかいないのだから。
…例えばそれは、彼の言う、生き別れた妹みたいな存在、とか。
私はそっと、教室の扉を開いた。
「見つかりましたか?妹さんは。」
彼が驚いたのは鼻歌を聞かれたからでも、突然背中から話しかけられたからでもない。
私の、擦れた顔のせいだ。
お互い顔を見合わせ、ひと呼吸おいて笑みが溢れる。
「ああ…しかし、どうやらいちばん遠いところにいたらしい。」
そして1番遠い場所は自分の背中なのだと兄は言った。
扉の隙間には、うっすら化粧の跡が残っている。
(おしまい)(この物語はフィクションです)
参考:『飛んだピエロ』(なかとかくみこ)
双眼鏡に押し当てた目から化粧が剥がれ、色の無い素肌が現れたことで、純太郎が透明人間であると知った。彼は雨の日に窓の外を観察することで、同じように剥がれて現れる『透明人間の家族』を探しているのだと気付いたから。
ここからいちばん遠いところは自分の背中である。
(寺山修司)
(J Kは 6月なんて 好きじゃない!)
放課後、予報はずれの雨を前に、心の一句。
毎日1時間かかるお化粧が、あっという間にぐずぐずになるのが私は嫌いだった。
そんな顔、女子高生なら誰だって見られたくないでしょう?
机に置き傘があったっけ、と教室へ戻ったとき
隣のクラスから微かな声が聞こえた。
「始めようか天体観測、ほうき星をナントヤラ〜♪…」
2分後に誰も来ないと思って、鼻歌なんか歌っている。
扉の隙間から覗くと、彼がちょうど机から『あれ』を取り出すところだった。
ああ、学校の七不思議とは言わずとも。
噂の現場を、目撃した。
ジュンタロー先輩の奇行が知れ渡ったのは、6月の梅雨入りからだった。
雨が降るたび、一生懸命双眼鏡で窓の外を観察している。
私の友達は、『双眼鏡で女性の透けた下着をウォッチングする変態クソヤロー』
だと言っていた。みんなも、たぶん、きっとそうだと。
女の敵じゃん、サイテーじゃん。
と非難轟々。でも本当にそうだろうか?
彼は意に介さないようだが、たった一度だけ「妹を探している」と弁明した。
無事に一蹴されてロリコンに昇格したけれども。
仮にそれが嘘だとして、
そんな虚言で上塗りする意味がどこにあるのか??
先輩の家族のことは、誰も知らない。
ただ母親が、小さい頃に消えてしまったのだと、聞いている。
文字通り、消えてしまったのだと。
その真実は、子供ながら「お星様になった」なんて詩的に表現する事柄なのかもしれない。
しかし机から双眼鏡を取り出す
彼の天体観測は誰の目にもロマンチックに映らなかった。
ただ、
そんなレンズを覗き込む顔に、気付いた人は他にいるのだろうか。
(なるほど、ね。)
私はみつけてしまった。
擦れて化粧が剥がれ、透明な素肌が現れた、あの目を。
「見えないものを見ようとして〜…」
彼の鼻歌は、まだ続く。
『透明人間』
がこの世に、いや目の前に存在するということ。
彼の思惑が理解されないように、
私がいま見た現実も、周囲にはわかってもらえないだろう。
そりゃあそうだ。
どちらもすべて理解してくれるのは、『同類』しかいないのだから。
…例えばそれは、彼の言う、生き別れた妹みたいな存在、とか。
私はそっと、教室の扉を開いた。
「見つかりましたか?妹さんは。」
彼が驚いたのは鼻歌を聞かれたからでも、突然背中から話しかけられたからでもない。
私の、擦れた顔のせいだ。
お互い顔を見合わせ、ひと呼吸おいて笑みが溢れる。
「ああ…しかし、どうやらいちばん遠いところにいたらしい。」
そして1番遠い場所は自分の背中なのだと兄は言った。
扉の隙間には、うっすら化粧の跡が残っている。
(おしまい)(この物語はフィクションです)
参考:『飛んだピエロ』(なかとかくみこ)
「僕らの知らない大岡裁き」「15Good」
良質:12票トリック:2票物語:1票
大岡越前守忠相の前に、一人の子どもと二人の女が連れてこられました。
二人の女は、どちらも「子どもの母親は自分だ」と主張して譲りません。
忠相は二人に「子どもの腕を一本ずつ持って引っ張り合い、勝った方を母親と認める」と言いました。
その言葉に従い二人の女は子どもを引っ張り合います。
ところが女のうちの片方が、子どもの腕が伸びるのを恐れて手を離してしまいました。
手を離した女は「敲(たたき)の刑」に処せられることとなりました。
状況を説明してください。
二人の女は、どちらも「子どもの母親は自分だ」と主張して譲りません。
忠相は二人に「子どもの腕を一本ずつ持って引っ張り合い、勝った方を母親と認める」と言いました。
その言葉に従い二人の女は子どもを引っ張り合います。
ところが女のうちの片方が、子どもの腕が伸びるのを恐れて手を離してしまいました。
手を離した女は「敲(たたき)の刑」に処せられることとなりました。
状況を説明してください。
22年07月12日 10:22
【ウミガメのスープ】 [ごらんしん]
【ウミガメのスープ】 [ごらんしん]
解説を見る
子どもの腕を両側から引っ張る二人の女。
どちらも譲る気はなさそうです。
「このままではまずい、子どもの腕が千切れてしまう」
忠相が二人を止めようとしたまさにその瞬間、子どもの腕がビヨ〜~~~ンと伸びたのでした。
突然のことに恐れをなした片方の女は、子どもの手を離すと、その場に腰を抜かしてしまいました。
「おのれ妖怪め!」忠相は刀を抜くと素早く子どもを斬り殺します。
そして、すぐにもう一方の女に向き合うと「伸びた腕に驚かない貴様も妖怪だな!」と言うやいなや、女を一刀両断に切り裂いてしまったのでした。
忠相は刀を収めると、腰を抜かしている女に近づき、キツい口調で咎めました。
「お前は自分が母親だと嘘を申したな。お白洲で嘘を申した罪、軽くはないぞ!」
数日後、女は「敲の刑」を受けることとなったのでした。
どちらも譲る気はなさそうです。
「このままではまずい、子どもの腕が千切れてしまう」
忠相が二人を止めようとしたまさにその瞬間、子どもの腕がビヨ〜~~~ンと伸びたのでした。
突然のことに恐れをなした片方の女は、子どもの手を離すと、その場に腰を抜かしてしまいました。
「おのれ妖怪め!」忠相は刀を抜くと素早く子どもを斬り殺します。
そして、すぐにもう一方の女に向き合うと「伸びた腕に驚かない貴様も妖怪だな!」と言うやいなや、女を一刀両断に切り裂いてしまったのでした。
忠相は刀を収めると、腰を抜かしている女に近づき、キツい口調で咎めました。
「お前は自分が母親だと嘘を申したな。お白洲で嘘を申した罪、軽くはないぞ!」
数日後、女は「敲の刑」を受けることとなったのでした。
「ソウル・ジェム」「15Good」
良質:9票物語:2票納得感:4票
『不死石』と呼ばれる宝石。
その正体は、
ラテラテ鳥という小鳥の体内に、
稀に発生する腫瘍が結晶化した物である。
鈍い光沢を持つその小さな赤い石には、
不老不死の力があると言い伝えられており、
故に、
ラテラテ鳥は『不死鳥』という別名で呼ばれることもある。
・・・
さて、件の言い伝えは、
ラテラテ鳥の死骸を見つけた人間が皆、
口を揃えて「○○○○」と言ったことに起因する。
果たして彼らはなんと言ったのだろう?
※彼らの発言と言い伝えの関係性も一緒に答えてください。
※○の数は重要ではありません。(内容合ってれば正解)
その正体は、
ラテラテ鳥という小鳥の体内に、
稀に発生する腫瘍が結晶化した物である。
鈍い光沢を持つその小さな赤い石には、
不老不死の力があると言い伝えられており、
故に、
ラテラテ鳥は『不死鳥』という別名で呼ばれることもある。
・・・
さて、件の言い伝えは、
ラテラテ鳥の死骸を見つけた人間が皆、
口を揃えて「○○○○」と言ったことに起因する。
果たして彼らはなんと言ったのだろう?
※彼らの発言と言い伝えの関係性も一緒に答えてください。
※○の数は重要ではありません。(内容合ってれば正解)
22年07月26日 23:31
【20の扉】 [るょ]
【20の扉】 [るょ]
解説を見る
その貧しい地域では、
ラテラテ鳥の狩猟、飼育は愚か、
死体の拾得にすら厳しい規制がかけられていた。
無論、貴重な財源である赤い宝石の流通を制限するためである。
ある朝のこと。
散歩中に運良くラテラテ鳥の死骸を見つけた男がいた。
彼は急いで袋に死骸を放り込むと、散歩を中断し、足早に去っていったという。
許可無くラテラテ鳥を持ち帰れば、鞭打ちの刑は免れないだろう。
彼らはそれを重々承知している。
そして、この小鳥の抱える腫瘍が高値で売れることも理解している。
人に尋ねられた彼らは、口を揃えてこう言うのだった。
「ラテラテ鳥の死骸なんて、見たことがないよ。」
・・・
誰一人として死骸を見たことがない、不思議な鳥が持つ赤い石。
やがてその石は、皮肉を込めて『不死石』と呼ばれるようになった。
仮に公的機関がラテラテ鳥の死骸が発見しても、
それは誰かが赤い宝石を抜き取ったあとであることほとんど。
人々は言う。
「『不死石』を失ったから、そのラテラテ鳥は死んだのだ」と。
余談だが、
土葬を行う際、遺体の体内に『不死石』を埋め込んでおくと、
次の日には遺体が墓から居なくなっているのだという。
…死者が蘇り、地面から這い出てどこかに旅立っていくのだろうか?
尋ねられた墓守たちは、口を揃えてこう言う。
「遺体が這い出てくる瞬間なんて、見たことがないよ。」
体内に『不死石』を埋め込んだ人間の遺体は、
未だにひとつも見つかっていない。
答え:
ラテラテ鳥の死骸を拾得したことを隠すため、
彼らは「ラテラテ鳥の死骸なんて見ていない(見たことない)」と言う。
誰一人として死骸を見たことがない、不思議な鳥が持つ赤い石。
やがてその石を、『不死石』と呼ぶようになったのだった。
ラテラテ鳥の狩猟、飼育は愚か、
死体の拾得にすら厳しい規制がかけられていた。
無論、貴重な財源である赤い宝石の流通を制限するためである。
ある朝のこと。
散歩中に運良くラテラテ鳥の死骸を見つけた男がいた。
彼は急いで袋に死骸を放り込むと、散歩を中断し、足早に去っていったという。
許可無くラテラテ鳥を持ち帰れば、鞭打ちの刑は免れないだろう。
彼らはそれを重々承知している。
そして、この小鳥の抱える腫瘍が高値で売れることも理解している。
人に尋ねられた彼らは、口を揃えてこう言うのだった。
「ラテラテ鳥の死骸なんて、見たことがないよ。」
・・・
誰一人として死骸を見たことがない、不思議な鳥が持つ赤い石。
やがてその石は、皮肉を込めて『不死石』と呼ばれるようになった。
仮に公的機関がラテラテ鳥の死骸が発見しても、
それは誰かが赤い宝石を抜き取ったあとであることほとんど。
人々は言う。
「『不死石』を失ったから、そのラテラテ鳥は死んだのだ」と。
余談だが、
土葬を行う際、遺体の体内に『不死石』を埋め込んでおくと、
次の日には遺体が墓から居なくなっているのだという。
…死者が蘇り、地面から這い出てどこかに旅立っていくのだろうか?
尋ねられた墓守たちは、口を揃えてこう言う。
「遺体が這い出てくる瞬間なんて、見たことがないよ。」
体内に『不死石』を埋め込んだ人間の遺体は、
未だにひとつも見つかっていない。
答え:
ラテラテ鳥の死骸を拾得したことを隠すため、
彼らは「ラテラテ鳥の死骸なんて見ていない(見たことない)」と言う。
誰一人として死骸を見たことがない、不思議な鳥が持つ赤い石。
やがてその石を、『不死石』と呼ぶようになったのだった。
「曖昧亭のスープ」「15Good」
良質:12票トリック:1票納得感:2票
将来のことをまだ何も考えておらず、田舎で暮らしながら暢気にテレビを見ていたカメオ。
ニュースで解説されるのは野菜高騰だの動物絶滅だの年金問題だの感染症だの憂鬱なものばかり。
そんな中で突然、都会に居るはずの弟のウミオがやってきたのでビックリしてしまった。
自分のときはどうにか移動手段があったが、
先ほど見ていたニュースから、移動制限がかかりこちらに来れないだろうと思っていたのだ。
どうやって来たのか尋ねたところ、自分とは違う手段でここまで来たらしい。
それを聞いて、カメオは家業を継ぐことを決意した。
一体どういうこと?
ニュースで解説されるのは野菜高騰だの動物絶滅だの年金問題だの感染症だの憂鬱なものばかり。
そんな中で突然、都会に居るはずの弟のウミオがやってきたのでビックリしてしまった。
自分のときはどうにか移動手段があったが、
先ほど見ていたニュースから、移動制限がかかりこちらに来れないだろうと思っていたのだ。
どうやって来たのか尋ねたところ、自分とは違う手段でここまで来たらしい。
それを聞いて、カメオは家業を継ぐことを決意した。
一体どういうこと?
22年08月07日 21:34
【ウミガメのスープ】 [白]
【ウミガメのスープ】 [白]
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妊娠初期から体調不良で母が入院している間、田舎でキャベツ農家を営む祖父母のもとに預けられていたカメオ君。
彼は子どもニュースを見ていた。
「年金破綻するから少子化どうにかしちゃうよ特集」
タイヘンなんだなー、何万人もふやそうとしてるのね(・ω・)
「絶滅しかかっている動物たち特集」
タイヘンなんだなー、コウノトリさん200羽しかいないのね(・ω・)
……あれ?
僕のときはコウノトリさんが運んでくれたって母上言ってたけど……?(・ω・;)
そんなわけで、生まれて間もない弟ウミオを抱えてきた母ウミコに
弟君どうやって来たの?コウノトリさんカローシしてない!?と尋ねたのだが、
心配し過ぎるカメオのため、キャベツ畑から来たから問題ないと母は説明した。
「異常気候による野菜高騰特集」
……キャベツもあぶないはずだよ!?次の弟君妹ちゃんのために僕もキャベツ育てる!!!(;ω;)
彼は子どもニュースを見ていた。
「年金破綻するから少子化どうにかしちゃうよ特集」
タイヘンなんだなー、何万人もふやそうとしてるのね(・ω・)
「絶滅しかかっている動物たち特集」
タイヘンなんだなー、コウノトリさん200羽しかいないのね(・ω・)
……あれ?
僕のときはコウノトリさんが運んでくれたって母上言ってたけど……?(・ω・;)
そんなわけで、生まれて間もない弟ウミオを抱えてきた母ウミコに
弟君どうやって来たの?コウノトリさんカローシしてない!?と尋ねたのだが、
心配し過ぎるカメオのため、キャベツ畑から来たから問題ないと母は説明した。
「異常気候による野菜高騰特集」
……キャベツもあぶないはずだよ!?次の弟君妹ちゃんのために僕もキャベツ育てる!!!(;ω;)












