「【正体不明】」「27Good」
良質:12票トリック:8票納得感:7票
【全員が全員の隣に姿を認める者は誰?】
※参加テーマ {正体不明}な人物・キャラ
その{正体}は
『U・N・オーエン氏』
『黒の組織の黒幕候補』
『悪魔の体を持つ人間』
『お願いを叶える何か』
『未確認幻想飛行少女』
『逸脱して可愛い怪異』
『孤高なる仮面の剣士』
『謎多き天才浮世絵師』
ではなく...
この問題で 最初に{参加宣言}をし
そして最初に{質問}をしてくださった
【ハイジさん】でした。
【全員が全員の隣に姿を認める者は誰?】
※参加テーマ {正体不明}な人物・キャラ
23年03月02日 22:00
【20の扉】 [青信号]
【20の扉】 [青信号]
ご参加ありがとうございました!
解説を見る
その{正体}は
『U・N・オーエン氏』
『黒の組織の黒幕候補』
『悪魔の体を持つ人間』
『お願いを叶える何か』
『未確認幻想飛行少女』
『逸脱して可愛い怪異』
『孤高なる仮面の剣士』
『謎多き天才浮世絵師』
ではなく...
この問題で 最初に{参加宣言}をし
そして最初に{質問}をしてくださった
【ハイジさん】でした。
「降り注ぐ日差しがあって だからこそ日陰があって」「27Good」
良質:15票トリック:6票納得感:6票
今日はずっと雨が降りそうな天気だったのでコンビニに向かったカメオ。
しかしすぐに分厚い雲が無くなり、だんだんと晴れてきた。
さてこの時太陽の光が綺麗に○に映っていたため、コンビニからの帰り道、カメオは赤の他人であるカメコを殺した。
○は何?
しかしすぐに分厚い雲が無くなり、だんだんと晴れてきた。
さてこの時太陽の光が綺麗に○に映っていたため、コンビニからの帰り道、カメオは赤の他人であるカメコを殺した。
○は何?
23年04月09日 20:09
【20の扉】 [ベルン]
【20の扉】 [ベルン]
だからこそ日陰「も」あって おかぷ中
解説を見る
【月】
狼男のカメオ。
分厚い雲が覆っていたのでまぁコンビニくらいなら大丈夫だろうと外出したところ、突然晴れてきた。
そして満月の光がカメオを照らし、狼男となったカメオは隣を歩いていたカメコを殺してしまった。
※満月の光=月に映った太陽の光
狼男のカメオ。
分厚い雲が覆っていたのでまぁコンビニくらいなら大丈夫だろうと外出したところ、突然晴れてきた。
そして満月の光がカメオを照らし、狼男となったカメオは隣を歩いていたカメコを殺してしまった。
※満月の光=月に映った太陽の光
「泣きたくなるほど嬉しい日々に」「26Good」
良質:12票トリック:6票物語:7票納得感:1票
小さい頃からクランの花が大好きで、一度でいいからクランの花畑に行きたいと望んでいたコトミ。
しかしコトミは体が弱いため、なかなか遠くの地にしか咲かないクランの花畑に行くことが出来なかった。
それでもなんとかして連れて行きたいと、両親は、コトミの18歳の誕生日にクランの花畑に連れて行こうと決めた。
そして迎えた18歳の誕生日、両親に連れられ、コトミは念願のクランの花畑に行くことができた。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、頬を緩めた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
さて、クランの花に囲まれ、微笑むコトミの頬を伝う涙は、{嬉しさではなく、悲しみによるものである}。
一体なぜ?
しかしコトミは体が弱いため、なかなか遠くの地にしか咲かないクランの花畑に行くことが出来なかった。
それでもなんとかして連れて行きたいと、両親は、コトミの18歳の誕生日にクランの花畑に連れて行こうと決めた。
そして迎えた18歳の誕生日、両親に連れられ、コトミは念願のクランの花畑に行くことができた。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、頬を緩めた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
さて、クランの花に囲まれ、微笑むコトミの頬を伝う涙は、{嬉しさではなく、悲しみによるものである}。
一体なぜ?
22年10月03日 22:33
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
月曜22時頃まで!
解説を見る
【簡易解説】
クランの花畑を見た夜、発作に対応できず、そのまま亡くなってしまったコトミ。
死ぬまでに見ておきたかったクランの花を見ることができたのか、その死に顔は微笑んでいた。
さて、お葬式のとき、棺の中でクランの花に囲まれて横たわるコトミを見て母親の流した涙がコトミの頬に落ち、そのまま流れていった。
【物語風解説】
コトミは少し貧しい家に、一人娘として生まれた。
念願の子供だったのもあり、両親は大変愛情をこめてコトミを育てた。
コトミもそんな両親が大好きだった。
しかし、コトミは生まれつき体が弱く、ほとんどの時間を病院で過ごしていた。
両親はそんなコトミの治療費を稼ぐため、必死になって働いていた。
そのため、コトミのそばにはいつもおばあちゃんがいて、話し相手になったり、簡単なゲームをしたり、本を読んであげたりした。
その中でもコトミが大好きだったのは、おばあちゃんの昔話。
おばあちゃんは旅がとても大好きで、色々なところに行っており、ほとんど病院から出られないコトミにとって見たことのない所の話は、とても新鮮で面白かった。
アフリカに行ってピラミッドという大きなお墓の中に入った話。
アメリカに行って今は亡きおじいちゃんと運命的な出会いをした話。
インドに行って大量のお金を盗まれた話。
この世界は色々なことで満ちあふれているというのは、コトミにとってとても魅力的だった。
その中でも特にコトミが気に入っていたのは、北欧にあるというクランの花のお話。
なんとクランは、雪の中から鮮やかな青色をした花を咲かすという。
そのためその花は、どんな辛いときでも希望を与えてくれる花だと現地では言い伝えられているらしい。
そしてその花畑は、おじいちゃんがおばあちゃんに結婚を申し込んだところでもあった。
懐かしそうに、それでいてどこか淋しそうにその話をしてくれるおばあちゃんを見ていると、コトミもクランの花畑にとっても行きたくなった。
おばあちゃんが見せてくれた、当時撮った写真の中のクランの花は、色あせているのにも関わらずコトミの瞳にとても鮮やかに映った。
私もこんな綺麗なところ、おばあちゃんの思い出の場所に行ってみたいなぁ。
コトミの口からは自然とその言葉が漏れた。
…そうだね、大きくなって、元気になったらおばあちゃんと一緒に行こうね。
おばあちゃんは笑顔でそう言った。
うん!
コトミも嬉しそうに返した。
それから約一年、おばあちゃんは病気にかかり、そのまま天国に行ってしまった。
生まれてから一番長く一緒の時間を過ごした人の死。
コトミはそれが受け入れがたく、固く心を閉ざしてしまった。
それを見た両親は、少なくとも片方はずっとコトミのそばにいてあげようと誓った。
ある日、お母さんがおばあちゃんの遺品を整理していると、コトミ、と書かれた箱が出てきた。
箱を開けると、中からはノートが一冊入っていた。
ノートを開くと、そこにはコトミと過ごした日々が日記に綴られていた。
とりとめもない日常のことばかりだったが、コトミとおばあちゃんが二人で過ごした日々が、明確に脳裏に浮かんでくるようで、お母さんの目からは涙がこぼれた。
そのままペラペラとノートをめくっていくと、中から何枚かの写真が落ちた。
ピラミッドに行ったときの写真や、おじいちゃんとのツーショット。
そして、雪の中に咲き誇るクランの花畑。
こんなにいろんなお話をしてくれたんだね...
ありがとう...
そう思いながらもお母さんは、その形見をコトミの病室に持って行った。
コトミにそれを見せると、コトミの目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
…そしてまた一筋。
そのノートと写真は、コトミの心を開く鍵となり、それからおばあちゃんとの思い出をコトミはゆっくりと話してくれた。
そして、おばあちゃんはもうここにはいないと知っているのに、全然実感が湧かなかったということも。
そして…
でも、最近は夢でずっとおばあちゃんが色々な話をしてくれるんだ。
…だから、もう悲しくなんてないよ。
今まで、折角そばにいてくれたのに態度悪くしてごめんね。
お母さんには、7歳になるコトミの姿が、ずいぶんと大人びて見えた。
こちらこそごめんね、お母さん、こんなにコトミのこと知らなかったなんて気付かなかった。
こんなお母さんだけど、これからもよろしくね。
…うん!
それからコトミは、お母さんやお父さんとも、生前のおばあちゃんと同じくらい心を開き、それからの入院生活を楽しそうに送り始めた。
そんなある日、お母さんは、8歳の誕生日を祝おうと、誕生日に何が欲しいかを尋ねてみた。
するとコトミは、クランの花を実際に見たいと告げた。
家があまり裕福でない上に病気の治療費がかさんでいるのを知っていたのか、滅多に欲しいものなど言わなかったコトミが求めたもの。
それは、遠くの地にしか咲かない、今は亡きおばあちゃんの思い出の地である花畑だった。
滅多に願い事を言わない娘が希望したものだったので、クランの花畑は絶対に見せようと両親は心に誓った。
…いつか絶対一緒に見ようね。ただ、今すぐにはコトミの体調もあるし、ちょっと遠い場所にあるからなぁ。
大きくなって、体調が良くなったら絶対見に行こう、約束するね。
それから十年近く経った。
コトミの病気はなかなか良くならず、いまだにクランの花畑まで連れて行くことは出来ていなかった。
もうすぐ18歳、ついに成人だな。
誕生日は何が欲しい?
…やっぱりクランの花畑が見たい
そうだよな、小さい頃からずっと言ってるもんな。
でも私の病気がっていうんでしょ?
…いや、数日病院を離れるくらいは何とか出来るか、お医者さんにもう一度尋ねてみよう
そうやって毎年のように言ってるじゃない
…はは、でも折角成人になるんだ、今年こそコトミの夢を叶えてあげたいんだ
そして何度も無理言って医者に頼んだ結果、お医者さん同行のもと、数日間の旅行をなんとか許可して貰えた。
コトミ! 今年こそクランの花畑に行けるぞ!
え! 本当に?
コトミの体調が良かったら、という条件付きだけど、サトミ先生も一緒に来てくれるんだって!
ぱぁっと満面の笑みを咲かせるコトミ。
それだけで、両親の心は温かくなった。
そして迎えた旅行前日。
コトミの体調も旅行に合わせたかのように、絶好調だった。
これなら数日病院を離れても大丈夫でしょう、という先生の言葉は、それだけでコトミと両親をとっても嬉しくさせた。
そして出発の日。
コトミは初めて日本を出た。
初めての飛行機、初めての外国、初めての景色…
初めてだらけの経験にコトミは胸を躍らせていた。
…と同時に、体には負担がとてもかかっていることにコトミは気づけていなかった。
そのまま、コトミ一行はクランの花畑のある国に到着した。
明日はついに長年の夢だった、クランの花畑。
今が満開で一番の見頃だという。
興奮とある種の緊張で、その晩はなかなか寝付けなかったコトミだが、ホテルのベッドで微睡むうちにいつのまにか翌朝になっていた。
今日、ついに、クランの花畑が見れる。
おばあちゃんの思い出の場所に行ける。
そう思うだけでワクワクしていた。
そして、母親に車椅子を押してもらいながら、クランの花畑に到着したコトミ。
実はコトミには内緒で、両親は花畑を一時間だけ貸し切りにしてもらっていた。
貸切状態に驚くカメコの目の前に広がっているのは、雪の積もる中、一面に咲き誇る青色の花。
どんなに辛いときでも希望を、幸せを運んでくれるという花。
そして、おばあちゃんとおじいちゃんの思い出の花。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、笑みを浮かべた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
車椅子からいつの間にか立ち上がり、ただただ青色の花々に見とれるコトミ。
その目からは嬉し涙が溢れていた。
「本当にクランの花畑を私、見てるのね…」
普段は観光客でいっぱいの花畑が、この一時間だけはコトミだけのものである。
心の底から喜ぶコトミを見ながら、両親も涙を流して微笑んでいる。
コトミが人生で一番見たかったもの、それを一緒に見れている。
私たちはなんて幸せなんだろう。
「コトミ、18歳の誕生日、おめでとう」
「お父さん、お母さん… ありがとう… 本当にありがとう…」
このまま時が止まってしまえばいいのに。
ずっとここにいられたらいいのに。
しかし時間は残酷で、貸し切りの一時間は一瞬で過ぎ去り、閉園時刻が訪れた。
あとはホテルに戻って、明日には飛行機で日本に帰ってしまう。
あぁ、クランの花畑は本当に綺麗だったな…
もっともっといたかったな…
そう思いを馳せながら、タクシーに揺られるコトミ。
でも本当に幸せだったな…
そんな時だった。
慣れない旅行で疲れていたのか、予期せぬ発作が起こった。
「う゛っ!!」
突然苦しみ出すコトミ。
必死に呼びかける両親。
異常に気付き、急いでタクシーを路肩に止める、言葉のほとんど通じない運転手。
鞄から発作を収める薬を取り出し、焦りつつも慣れた手つきで注射する医者。
「う゛っ げほっ げほっ」
「コトミ! 大丈夫か!?」
「コトミちゃん!」
「… うん、 げほっ 薬のおかげで大分落ち着いたみたい…」
胸をなで下ろす両親と医者。
「よかった…」
「う゛ぅ … ふぅ。。」
「いったんタクシーから降りて、そこに横になろう」
「…うん」
タクシーの外に運ばれながら、コトミは直感的に感じていた。
この発作は今までに無いほど辛いもので、
このまま自分は死んでいくことを。
「クランの花… とっても綺麗だったよ」
「…うん、綺麗だったね」
「本当に連れてきてくれてありがとう。
私のわがままを聞いてくれてありがとう」
「…」
「本当にお父さんとお母さんの元に生まれれて幸せだった」
そのままそっとコトミは息を引き取った。
その顔は、発作が起こったとは思えないほど穏やかで、口元には笑みすらたたえていた。
数日後。
特別に許可をもらい、クランの花畑から摘んで持って帰ってきたクランの花が、コトミのお葬式で大量に飾られた。
その中心で微笑む、写真の中のコトミ。
両親は改めて愛娘の死を実感したが、もはや涙は出なかった。
そしてお葬式が終わり、式場を飾っていたたくさんのクランの花がコトミの入った棺の中に全て入れられた。
クランの花に囲まれるコトミ。
その微笑みを浮かべた死に顔を見て、両親の目からは枯れたと思っていた涙が再び溢れ出してきた。
その中の一滴がコトミの頬に落ち、そのまま流れてクランの花びらに染みを作った。
どんな辛いときでも希望を運んでくれるという、幸せの花。
その見事なまでに青い花は、コトミと一緒に灰となり、天高く昇っていった。
クランの花畑を見た夜、発作に対応できず、そのまま亡くなってしまったコトミ。
死ぬまでに見ておきたかったクランの花を見ることができたのか、その死に顔は微笑んでいた。
さて、お葬式のとき、棺の中でクランの花に囲まれて横たわるコトミを見て母親の流した涙がコトミの頬に落ち、そのまま流れていった。
【物語風解説】
コトミは少し貧しい家に、一人娘として生まれた。
念願の子供だったのもあり、両親は大変愛情をこめてコトミを育てた。
コトミもそんな両親が大好きだった。
しかし、コトミは生まれつき体が弱く、ほとんどの時間を病院で過ごしていた。
両親はそんなコトミの治療費を稼ぐため、必死になって働いていた。
そのため、コトミのそばにはいつもおばあちゃんがいて、話し相手になったり、簡単なゲームをしたり、本を読んであげたりした。
その中でもコトミが大好きだったのは、おばあちゃんの昔話。
おばあちゃんは旅がとても大好きで、色々なところに行っており、ほとんど病院から出られないコトミにとって見たことのない所の話は、とても新鮮で面白かった。
アフリカに行ってピラミッドという大きなお墓の中に入った話。
アメリカに行って今は亡きおじいちゃんと運命的な出会いをした話。
インドに行って大量のお金を盗まれた話。
この世界は色々なことで満ちあふれているというのは、コトミにとってとても魅力的だった。
その中でも特にコトミが気に入っていたのは、北欧にあるというクランの花のお話。
なんとクランは、雪の中から鮮やかな青色をした花を咲かすという。
そのためその花は、どんな辛いときでも希望を与えてくれる花だと現地では言い伝えられているらしい。
そしてその花畑は、おじいちゃんがおばあちゃんに結婚を申し込んだところでもあった。
懐かしそうに、それでいてどこか淋しそうにその話をしてくれるおばあちゃんを見ていると、コトミもクランの花畑にとっても行きたくなった。
おばあちゃんが見せてくれた、当時撮った写真の中のクランの花は、色あせているのにも関わらずコトミの瞳にとても鮮やかに映った。
私もこんな綺麗なところ、おばあちゃんの思い出の場所に行ってみたいなぁ。
コトミの口からは自然とその言葉が漏れた。
…そうだね、大きくなって、元気になったらおばあちゃんと一緒に行こうね。
おばあちゃんは笑顔でそう言った。
うん!
コトミも嬉しそうに返した。
それから約一年、おばあちゃんは病気にかかり、そのまま天国に行ってしまった。
生まれてから一番長く一緒の時間を過ごした人の死。
コトミはそれが受け入れがたく、固く心を閉ざしてしまった。
それを見た両親は、少なくとも片方はずっとコトミのそばにいてあげようと誓った。
ある日、お母さんがおばあちゃんの遺品を整理していると、コトミ、と書かれた箱が出てきた。
箱を開けると、中からはノートが一冊入っていた。
ノートを開くと、そこにはコトミと過ごした日々が日記に綴られていた。
とりとめもない日常のことばかりだったが、コトミとおばあちゃんが二人で過ごした日々が、明確に脳裏に浮かんでくるようで、お母さんの目からは涙がこぼれた。
そのままペラペラとノートをめくっていくと、中から何枚かの写真が落ちた。
ピラミッドに行ったときの写真や、おじいちゃんとのツーショット。
そして、雪の中に咲き誇るクランの花畑。
こんなにいろんなお話をしてくれたんだね...
ありがとう...
そう思いながらもお母さんは、その形見をコトミの病室に持って行った。
コトミにそれを見せると、コトミの目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
…そしてまた一筋。
そのノートと写真は、コトミの心を開く鍵となり、それからおばあちゃんとの思い出をコトミはゆっくりと話してくれた。
そして、おばあちゃんはもうここにはいないと知っているのに、全然実感が湧かなかったということも。
そして…
でも、最近は夢でずっとおばあちゃんが色々な話をしてくれるんだ。
…だから、もう悲しくなんてないよ。
今まで、折角そばにいてくれたのに態度悪くしてごめんね。
お母さんには、7歳になるコトミの姿が、ずいぶんと大人びて見えた。
こちらこそごめんね、お母さん、こんなにコトミのこと知らなかったなんて気付かなかった。
こんなお母さんだけど、これからもよろしくね。
…うん!
それからコトミは、お母さんやお父さんとも、生前のおばあちゃんと同じくらい心を開き、それからの入院生活を楽しそうに送り始めた。
そんなある日、お母さんは、8歳の誕生日を祝おうと、誕生日に何が欲しいかを尋ねてみた。
するとコトミは、クランの花を実際に見たいと告げた。
家があまり裕福でない上に病気の治療費がかさんでいるのを知っていたのか、滅多に欲しいものなど言わなかったコトミが求めたもの。
それは、遠くの地にしか咲かない、今は亡きおばあちゃんの思い出の地である花畑だった。
滅多に願い事を言わない娘が希望したものだったので、クランの花畑は絶対に見せようと両親は心に誓った。
…いつか絶対一緒に見ようね。ただ、今すぐにはコトミの体調もあるし、ちょっと遠い場所にあるからなぁ。
大きくなって、体調が良くなったら絶対見に行こう、約束するね。
それから十年近く経った。
コトミの病気はなかなか良くならず、いまだにクランの花畑まで連れて行くことは出来ていなかった。
もうすぐ18歳、ついに成人だな。
誕生日は何が欲しい?
…やっぱりクランの花畑が見たい
そうだよな、小さい頃からずっと言ってるもんな。
でも私の病気がっていうんでしょ?
…いや、数日病院を離れるくらいは何とか出来るか、お医者さんにもう一度尋ねてみよう
そうやって毎年のように言ってるじゃない
…はは、でも折角成人になるんだ、今年こそコトミの夢を叶えてあげたいんだ
そして何度も無理言って医者に頼んだ結果、お医者さん同行のもと、数日間の旅行をなんとか許可して貰えた。
コトミ! 今年こそクランの花畑に行けるぞ!
え! 本当に?
コトミの体調が良かったら、という条件付きだけど、サトミ先生も一緒に来てくれるんだって!
ぱぁっと満面の笑みを咲かせるコトミ。
それだけで、両親の心は温かくなった。
そして迎えた旅行前日。
コトミの体調も旅行に合わせたかのように、絶好調だった。
これなら数日病院を離れても大丈夫でしょう、という先生の言葉は、それだけでコトミと両親をとっても嬉しくさせた。
そして出発の日。
コトミは初めて日本を出た。
初めての飛行機、初めての外国、初めての景色…
初めてだらけの経験にコトミは胸を躍らせていた。
…と同時に、体には負担がとてもかかっていることにコトミは気づけていなかった。
そのまま、コトミ一行はクランの花畑のある国に到着した。
明日はついに長年の夢だった、クランの花畑。
今が満開で一番の見頃だという。
興奮とある種の緊張で、その晩はなかなか寝付けなかったコトミだが、ホテルのベッドで微睡むうちにいつのまにか翌朝になっていた。
今日、ついに、クランの花畑が見れる。
おばあちゃんの思い出の場所に行ける。
そう思うだけでワクワクしていた。
そして、母親に車椅子を押してもらいながら、クランの花畑に到着したコトミ。
実はコトミには内緒で、両親は花畑を一時間だけ貸し切りにしてもらっていた。
貸切状態に驚くカメコの目の前に広がっているのは、雪の積もる中、一面に咲き誇る青色の花。
どんなに辛いときでも希望を、幸せを運んでくれるという花。
そして、おばあちゃんとおじいちゃんの思い出の花。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、笑みを浮かべた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
車椅子からいつの間にか立ち上がり、ただただ青色の花々に見とれるコトミ。
その目からは嬉し涙が溢れていた。
「本当にクランの花畑を私、見てるのね…」
普段は観光客でいっぱいの花畑が、この一時間だけはコトミだけのものである。
心の底から喜ぶコトミを見ながら、両親も涙を流して微笑んでいる。
コトミが人生で一番見たかったもの、それを一緒に見れている。
私たちはなんて幸せなんだろう。
「コトミ、18歳の誕生日、おめでとう」
「お父さん、お母さん… ありがとう… 本当にありがとう…」
このまま時が止まってしまえばいいのに。
ずっとここにいられたらいいのに。
しかし時間は残酷で、貸し切りの一時間は一瞬で過ぎ去り、閉園時刻が訪れた。
あとはホテルに戻って、明日には飛行機で日本に帰ってしまう。
あぁ、クランの花畑は本当に綺麗だったな…
もっともっといたかったな…
そう思いを馳せながら、タクシーに揺られるコトミ。
でも本当に幸せだったな…
そんな時だった。
慣れない旅行で疲れていたのか、予期せぬ発作が起こった。
「う゛っ!!」
突然苦しみ出すコトミ。
必死に呼びかける両親。
異常に気付き、急いでタクシーを路肩に止める、言葉のほとんど通じない運転手。
鞄から発作を収める薬を取り出し、焦りつつも慣れた手つきで注射する医者。
「う゛っ げほっ げほっ」
「コトミ! 大丈夫か!?」
「コトミちゃん!」
「… うん、 げほっ 薬のおかげで大分落ち着いたみたい…」
胸をなで下ろす両親と医者。
「よかった…」
「う゛ぅ … ふぅ。。」
「いったんタクシーから降りて、そこに横になろう」
「…うん」
タクシーの外に運ばれながら、コトミは直感的に感じていた。
この発作は今までに無いほど辛いもので、
このまま自分は死んでいくことを。
「クランの花… とっても綺麗だったよ」
「…うん、綺麗だったね」
「本当に連れてきてくれてありがとう。
私のわがままを聞いてくれてありがとう」
「…」
「本当にお父さんとお母さんの元に生まれれて幸せだった」
そのままそっとコトミは息を引き取った。
その顔は、発作が起こったとは思えないほど穏やかで、口元には笑みすらたたえていた。
数日後。
特別に許可をもらい、クランの花畑から摘んで持って帰ってきたクランの花が、コトミのお葬式で大量に飾られた。
その中心で微笑む、写真の中のコトミ。
両親は改めて愛娘の死を実感したが、もはや涙は出なかった。
そしてお葬式が終わり、式場を飾っていたたくさんのクランの花がコトミの入った棺の中に全て入れられた。
クランの花に囲まれるコトミ。
その微笑みを浮かべた死に顔を見て、両親の目からは枯れたと思っていた涙が再び溢れ出してきた。
その中の一滴がコトミの頬に落ち、そのまま流れてクランの花びらに染みを作った。
どんな辛いときでも希望を運んでくれるという、幸せの花。
その見事なまでに青い花は、コトミと一緒に灰となり、天高く昇っていった。
「lim(x→1) 1/x=疲弊」「26Good」
良質:15票トリック:5票納得感:6票
カメコが見た数字が分数だったなら、その値が1に近づけば近づくほど、
整数だったなら、その値が大きくなればなるほど、カメコの疲労は溜まっていく。
これは○○が壊れたからだというが、○○は何?
※○の数と文字数は関係ありません
※同義可
整数だったなら、その値が大きくなればなるほど、カメコの疲労は溜まっていく。
これは○○が壊れたからだというが、○○は何?
※○の数と文字数は関係ありません
※同義可
23年01月23日 23:23
【20の扉】 [ベルン]
【20の扉】 [ベルン]
解説を見る
【エレベーター】
エレベーターが壊れ、階段で自宅(50階)まで登る羽目になった小学生のカメコ。
階段に書かれた階数が大きくなるほどカメコは疲れていく。
階と階の間の踊り場に書かれた数(例えば二階と三階の間だと3/2など)が1に近づく(最後は50/49になる)ほど高層階となる(画像参照)
※画像はTwitterより拝借しました
エレベーターが壊れ、階段で自宅(50階)まで登る羽目になった小学生のカメコ。
階段に書かれた階数が大きくなるほどカメコは疲れていく。
階と階の間の踊り場に書かれた数(例えば二階と三階の間だと3/2など)が1に近づく(最後は50/49になる)ほど高層階となる(画像参照)
※画像はTwitterより拝借しました
「人と入れ替わることができる口紅(理沙子)」「26Good」
良質:3票トリック:8票物語:10票納得感:5票
およそ残酷な形で恋人に捨てられ、借金で困窮し、また頼れる友達をも失ってしまった理沙子は、絶望の淵で怪しげな路頭商人から口紅をもらった。
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』である。使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
理沙子は、自分の絶望に満ちた人生を捨てようと思い、それを用いることにした。
ターゲットは、大学の後輩である美里。その容姿と天衣無縫で活発な性格から皆に愛される存在だった。自分のような、陰気で卑屈な日陰者とは大違いだった。
理沙子は計画的に口紅を用いることにした。美里と入れ替わったあとに、美里の友達などに怪しまれてしまっては立つ瀬がない。非現実的とはいえ、仮にもこの口紅の存在や正体が露見することはあってはならない。自分が実は美里ではないと、疑われてはいけない。
入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。
理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。
——————
さて、実際に理沙子が口紅を使用した後、理沙子は記憶障害のふりをした。{無事成功して入れ替わったというのに、そこで美里のふりをすることは一切しなかったのだ。}
では、どうせ記憶障害ということにするのに、理沙子はなぜ美里のことを先のように徹底的に研究したのだろうか?
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』である。使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
理沙子は、自分の絶望に満ちた人生を捨てようと思い、それを用いることにした。
ターゲットは、大学の後輩である美里。その容姿と天衣無縫で活発な性格から皆に愛される存在だった。自分のような、陰気で卑屈な日陰者とは大違いだった。
理沙子は計画的に口紅を用いることにした。美里と入れ替わったあとに、美里の友達などに怪しまれてしまっては立つ瀬がない。非現実的とはいえ、仮にもこの口紅の存在や正体が露見することはあってはならない。自分が実は美里ではないと、疑われてはいけない。
入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。
理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。
——————
さて、実際に理沙子が口紅を使用した後、理沙子は記憶障害のふりをした。{無事成功して入れ替わったというのに、そこで美里のふりをすることは一切しなかったのだ。}
では、どうせ記憶障害ということにするのに、理沙子はなぜ美里のことを先のように徹底的に研究したのだろうか?
23年06月21日 23:10
【ウミガメのスープ】 [みさこ]
【ウミガメのスープ】 [みさこ]
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【簡易解説】
実際に入れ替わる前から美里のふりをすることで理沙子自身が『身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』を演じ、口紅を使用したタイミングを曖昧にするため。
(オオカミ少年を想像してもらえると展開がわかりやすい。)
【詳述】
全てを失った私は、その路頭で起死回生のアイテムをもらった。『路頭に迷う』とはよくいうものだが、それはひとえに悪いことにはないようである。
その口紅は、{最近の世間で都市伝説みたいに話題になっている}『人と入れ替わることができる口紅』その物だった。実現しているのか激しい議論が起こっていたが、まさか本当に実在していたなんて。
あの商人がなぜ私なんかにこれをくれたのかはわからないが、使うことに迷わなかった。
恋人には無碍に捨てられ、そのためにできた借金も残り、恋人といるために捨てた友達への信用も元に戻らない。あるいはこうした苦悩の果て、{ついには記憶障害に陥った。}そんな状況。
私の中には、楽しかった頃の記憶はない。今を取り巻く絶望だけが、私の全てだった。
『理沙子』という自分に未練などない。今すぐに、幸せな誰かと成り代わりたかった。
ターゲットは簡単に定められた。後輩の美里。私の記憶の中に残る少ない人物だった。
天衣無縫で活発可憐。それにおしゃれで容姿端麗な美里を嫌うものはいない。女子はもちろん、男子の思いも無意識に独り占めにする子だった。
それは私のかつての恋人も、例外ではなかった。だから私が捨てられたというのは、別にどうでもいいけれど。
陰気で卑屈な自分を捨てるには、美里と入れ替わるしかない。狭い視野のうちそう確信していたが、私には都合の悪いことが一つあった。
{この口紅のことが、都市伝説並みでも知れ渡っていることである。}
もちろん、多くの人は(現に今までの私だって)そんな非科学的なものを信じていない。私が今すぐに美里にキスしても、疑いの余地は残らないかもしれない。
しかし、多くの人の脳裏に口紅がよぎるのも事実なんだ。
私と美里がいきなり入れ替わったら、美里はひどく狼狽するだろう。そして私の身体で、自分は本当は美里なんだと連呼する。初めはみんな本気にしなくとも、やがて疑い始める人が現れるかもしれない。この口紅を頭に浮かべながら。
その疑いは非現実的かもしれないけど、数多くのうちの誰かは徹底的に調べるだろう。そして、君は本当に美里なのか、と{両人に}尋ねる。そこで私の姿の美里が次々に自分のプロフィールを言い当てていけば、その疑いは大きくなる。美里のふりをしなければならない私は、それを覆すほどうまく美里のふりができるだろうか?
どこかでボロを出してしまうに違いない。確信こそされなくても、「この子はもしかすると美里ではない」と疑い思われ続けて生きるのは苦痛だ。しかも、そのまま月日が経ってもし口紅の存在が都市伝説の域を出て明らかになれば、その疑いは確信に変わりうる。
それならば始めから美里のふりをしなければいいかとも思うが、諦めてただ単に記憶障害のふりをしても、疑いは生まれるもの。私の姿をした美里が必死に訴える不自然さには変わりがないのだから、むしろこちらが弁明できないことが不利になるかもしれない。
どうすれば入れ替わった後も怪しまれずにいられるか。美里の姿で美里のふりをすることを諦めた私は、ある計画を思いついた。
すなわち、今まさに問題になっている疑われ方を、そのまま利用するのだ。
-入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。-
しかし、そのトレースを実行するのは美里の姿でではない。{私の姿で}である。
「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」
私の姿のまま、『身体が入れ替わって狼狽する美里』を演じる。そうすれば先のように、初めは誰もが冗談としてしか相手にしないが、やがて口紅の都市伝説を挙げる者が現れる。完璧に美里のふりをするのは難しいかもしれないけど、『この人は実は本当に美里なのではないか』と疑わせるくらいなら私にもできそうだ。
そして、誰かが本物の美里に尋ねる。『君は本当に美里なのか?』それを返答するのは他でもない美里なのだから、いくら質問しても質問する人たちの持つ疑いが晴れていくだけ。
「ごめん、やっぱり美里は美里だよね。
あんな都市伝説、あるわけないか。」
「あの女の人がおかしいだけだったんだ。
変な噂で疑っちゃってごめんね、美里ちゃん。」
純粋な美里を疑ったことに、周囲は罪悪感すら持ち始める。そして友達の多い美里はどんどん信頼を獲得し、私『理沙子』はただの『自分が、身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』と一蹴され始める。
「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」
-理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。-
その想像を一つ一つ形にして演じる私。完全に周囲に軽蔑されゆくまで、私は自分の姿のまま、狼狽し焦り絶望する美里を演じ続けた。
そして、そうなってから件の口紅を使った。
夜、授業帰りに遅くなった美里の頭を背後から殴る。{この後この身体は記憶障害ということになる}こともあって、気絶させるには一石二鳥だ。
気絶した美里と無理やりキスをした後は、口紅は捨てた。なるべく口紅の存在が露見しないためだ。
そうして翌日、美里の姿となった私は、大学構内でまた一人の女性が奇妙なことを騒ぎ立てているということを耳にする。
{「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」}
本物の美里である。しかし、その『理沙子』を信じる者はもう一人もいない。この前までは私が演じていたということを弁明しようが、美里を信じる人はすでにいないのだ。
{「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」}
そして私は、自分が『殴られた』傷の悪化によって記憶障害になったことにした。これで何を尋ねられることもないし、周囲は私をただ憐れむだけだろう。診断だって、私は口紅を使う前より元から現に記憶障害なのだから、そう下されるだけ。
いずれ、『私を殴った』犯人も『理沙子』だと特定され、彼女は捕まる。大方、『自分が美里だと思い込むあまり、錯乱して本物の美里を襲ったのだろう』と推測されるのではないか。
私は今、長い間大学で話題になっていた異常者に襲われ、記憶障害になった哀れな被害者なんだ。始め美里を本物の美里か疑った人たちも、前にあらぬ疑いをかけた罪悪感から同じ疑いを生むことはほとんど絶対にない。
やがて私の美里のふりが不完全で齟齬が生じても、記憶障害のせいにできるし、少しずつ記憶が回復するふりをすれば、周囲は私を優しく扱ってくれる。
{嘘をつき続けて本当を喰らうオオカミ少年。
私はそれを一人二役で行ったことで、ついに完全に美里と成り替わることができた。}
病室に一人、美里は微かに笑みを浮かべた。
実際に入れ替わる前から美里のふりをすることで理沙子自身が『身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』を演じ、口紅を使用したタイミングを曖昧にするため。
(オオカミ少年を想像してもらえると展開がわかりやすい。)
【詳述】
全てを失った私は、その路頭で起死回生のアイテムをもらった。『路頭に迷う』とはよくいうものだが、それはひとえに悪いことにはないようである。
その口紅は、{最近の世間で都市伝説みたいに話題になっている}『人と入れ替わることができる口紅』その物だった。実現しているのか激しい議論が起こっていたが、まさか本当に実在していたなんて。
あの商人がなぜ私なんかにこれをくれたのかはわからないが、使うことに迷わなかった。
恋人には無碍に捨てられ、そのためにできた借金も残り、恋人といるために捨てた友達への信用も元に戻らない。あるいはこうした苦悩の果て、{ついには記憶障害に陥った。}そんな状況。
私の中には、楽しかった頃の記憶はない。今を取り巻く絶望だけが、私の全てだった。
『理沙子』という自分に未練などない。今すぐに、幸せな誰かと成り代わりたかった。
ターゲットは簡単に定められた。後輩の美里。私の記憶の中に残る少ない人物だった。
天衣無縫で活発可憐。それにおしゃれで容姿端麗な美里を嫌うものはいない。女子はもちろん、男子の思いも無意識に独り占めにする子だった。
それは私のかつての恋人も、例外ではなかった。だから私が捨てられたというのは、別にどうでもいいけれど。
陰気で卑屈な自分を捨てるには、美里と入れ替わるしかない。狭い視野のうちそう確信していたが、私には都合の悪いことが一つあった。
{この口紅のことが、都市伝説並みでも知れ渡っていることである。}
もちろん、多くの人は(現に今までの私だって)そんな非科学的なものを信じていない。私が今すぐに美里にキスしても、疑いの余地は残らないかもしれない。
しかし、多くの人の脳裏に口紅がよぎるのも事実なんだ。
私と美里がいきなり入れ替わったら、美里はひどく狼狽するだろう。そして私の身体で、自分は本当は美里なんだと連呼する。初めはみんな本気にしなくとも、やがて疑い始める人が現れるかもしれない。この口紅を頭に浮かべながら。
その疑いは非現実的かもしれないけど、数多くのうちの誰かは徹底的に調べるだろう。そして、君は本当に美里なのか、と{両人に}尋ねる。そこで私の姿の美里が次々に自分のプロフィールを言い当てていけば、その疑いは大きくなる。美里のふりをしなければならない私は、それを覆すほどうまく美里のふりができるだろうか?
どこかでボロを出してしまうに違いない。確信こそされなくても、「この子はもしかすると美里ではない」と疑い思われ続けて生きるのは苦痛だ。しかも、そのまま月日が経ってもし口紅の存在が都市伝説の域を出て明らかになれば、その疑いは確信に変わりうる。
それならば始めから美里のふりをしなければいいかとも思うが、諦めてただ単に記憶障害のふりをしても、疑いは生まれるもの。私の姿をした美里が必死に訴える不自然さには変わりがないのだから、むしろこちらが弁明できないことが不利になるかもしれない。
どうすれば入れ替わった後も怪しまれずにいられるか。美里の姿で美里のふりをすることを諦めた私は、ある計画を思いついた。
すなわち、今まさに問題になっている疑われ方を、そのまま利用するのだ。
-入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。-
しかし、そのトレースを実行するのは美里の姿でではない。{私の姿で}である。
「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」
私の姿のまま、『身体が入れ替わって狼狽する美里』を演じる。そうすれば先のように、初めは誰もが冗談としてしか相手にしないが、やがて口紅の都市伝説を挙げる者が現れる。完璧に美里のふりをするのは難しいかもしれないけど、『この人は実は本当に美里なのではないか』と疑わせるくらいなら私にもできそうだ。
そして、誰かが本物の美里に尋ねる。『君は本当に美里なのか?』それを返答するのは他でもない美里なのだから、いくら質問しても質問する人たちの持つ疑いが晴れていくだけ。
「ごめん、やっぱり美里は美里だよね。
あんな都市伝説、あるわけないか。」
「あの女の人がおかしいだけだったんだ。
変な噂で疑っちゃってごめんね、美里ちゃん。」
純粋な美里を疑ったことに、周囲は罪悪感すら持ち始める。そして友達の多い美里はどんどん信頼を獲得し、私『理沙子』はただの『自分が、身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』と一蹴され始める。
「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」
-理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。-
その想像を一つ一つ形にして演じる私。完全に周囲に軽蔑されゆくまで、私は自分の姿のまま、狼狽し焦り絶望する美里を演じ続けた。
そして、そうなってから件の口紅を使った。
夜、授業帰りに遅くなった美里の頭を背後から殴る。{この後この身体は記憶障害ということになる}こともあって、気絶させるには一石二鳥だ。
気絶した美里と無理やりキスをした後は、口紅は捨てた。なるべく口紅の存在が露見しないためだ。
そうして翌日、美里の姿となった私は、大学構内でまた一人の女性が奇妙なことを騒ぎ立てているということを耳にする。
{「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」}
本物の美里である。しかし、その『理沙子』を信じる者はもう一人もいない。この前までは私が演じていたということを弁明しようが、美里を信じる人はすでにいないのだ。
{「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」}
そして私は、自分が『殴られた』傷の悪化によって記憶障害になったことにした。これで何を尋ねられることもないし、周囲は私をただ憐れむだけだろう。診断だって、私は口紅を使う前より元から現に記憶障害なのだから、そう下されるだけ。
いずれ、『私を殴った』犯人も『理沙子』だと特定され、彼女は捕まる。大方、『自分が美里だと思い込むあまり、錯乱して本物の美里を襲ったのだろう』と推測されるのではないか。
私は今、長い間大学で話題になっていた異常者に襲われ、記憶障害になった哀れな被害者なんだ。始め美里を本物の美里か疑った人たちも、前にあらぬ疑いをかけた罪悪感から同じ疑いを生むことはほとんど絶対にない。
やがて私の美里のふりが不完全で齟齬が生じても、記憶障害のせいにできるし、少しずつ記憶が回復するふりをすれば、周囲は私を優しく扱ってくれる。
{嘘をつき続けて本当を喰らうオオカミ少年。
私はそれを一人二役で行ったことで、ついに完全に美里と成り替わることができた。}
病室に一人、美里は微かに笑みを浮かべた。